12月は『忠臣蔵』の季節で、CSでは沢山放映されている。以前は、地上波でも製作されていたが、最近はないようだ。
これは、1959年1月に公開された東映作品。冒頭に「発展感謝記念」の大川博社長の言葉が出る。
この時期、東映は、中村錦之助・東千代之介の娯楽版が大ヒットし、戦前からの大スターの片岡千恵蔵、市川右太衛門も擁して大変な勢いで、
「スタジオでは歩いているものはいなくて、全員が走っている」と言われた。
大石義雄は、もちろん片岡千恵蔵で、浅野内匠頭は錦之介、吉良上野介は進藤英太郎で、実に憎々しい。
前半は、内匠頭が吉良のいじめに会い、我慢に我慢を重ねるがついに松の廊下で刃傷に及び、切腹させられるまで。
錦之助は、もちろん歌舞伎の出なので、台詞は歌舞伎的だが、そこここで見せる笑顔や言葉尻には戦後派的な若者の姿があり、それは石原裕次郎にも通じる同時代性が感じられる。その辺が、彼の絶大な人気の所以だと思った。
ともかく多数の俳優が出ていて、新劇の加藤嘉、小沢栄太郎、山形勲らの他、大川橋蔵、里見浩太郎、原健策、月形龍之介、大河内伝次郎、大友柳太郎、大川恵子、丘さとみ、千原しのぶら東映の役者の他、木暮三千代、エノケン、香川良介、徳大寺伸、清川装司ら俳優、さらに岡譲二や立松晃などの戦前の二枚目も出ているが、多すぎてどこにいるのか分からなかった。
そして、大川橋蔵と結ばれて、吉良邸に女中として潜入し、絵図面を盗んでくるのが美空ひばりの豪華さ。
後半は、京の撞木町での大石のご乱行から始まるが、千恵蔵は、世話物的なこうした場面の演技は上手いことが分かる。
千恵蔵の息子と娘の植木も出ているのは、やはり東映重役の片岡千恵蔵のお力だろうか。
音楽は、現代音楽の深井史郎で、荘重かつテンポの良いメロディーで軽快にドラマを進める。
最後は、もちろん杉狂児と堺瞬二の蕎麦屋の二階に結集して本所松坂町に行き、吉良の首を上げる。この蕎麦屋は、元禄時代の江戸にはないものだったので嘘なのだが、まあいいだろう。
要は、江戸時代の庶民が思っていた武士の姿が凝縮されているのだ。
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