小川絵梨子芸術監督の手腕については疑問があったので、どうかと思っていたが、まあ普通の出来だった。
この日は忙しくて、まず宝町に行き、「最古の忠臣蔵」の予約券を取ってから地下鉄等を乗り継いで初台に行く。
イギリスの劇作家デビット・ヘアーの作で、ロンドンの郊外に一人で住むキラ(蒼井優)のところに若い男エドワード(葉山蒋之)がやってきて、母親が死んだのち、父親は精神が不安定になり、怖いといって去る。
この二人は、姉・弟なのかと思う。
すると中年のトム(浅野雅博)が来て、蒼井と関係が次第に分かってくる。それは、キラはトムと不倫関係にあった間柄で、エドワードはトムの息子なのだった。
なぜ、間違えたかといえば、浅野は、何軒かのレストランを所有し、運転手付きの車に乗っている富豪なのだが、そうは見えないからだった。これは配役の誤りで、完全に演出の小川絵梨子の間違いである。
浅野は元は貧困な家の生まれだったが、飲食店事業で成功した男で、元モデルの女性と結婚したというのだ。
蒼井が今住んでいる地区は貧困らしく、彼女の父は弁護士だったが、それほど裕福ではなく、今、彼女は貧しい子供がいる公立学校で教師をしているのだ。
結局、二人は3年ぶりの逢瀬で性交するが、最後は分かれることになる。
当たり前だが、階級差であり、それはイギリスが今でも非常に強い階級社会だからである。
蒼井優はすごいが、それ以外に見るべきものはなかった。
終わると、元のように電車を乗り継ぎ、国立映画アーカイブに行き、最古の『忠臣蔵』を、弁士と楽団付きで見る。
浅野内匠頭と大石義雄を、尾上松之助が二役で演じるもので、完全に歌舞伎の作りで、背景はセットではなく、書割で中には布に書いたようなものもあった。画面は、完全な据えっぱなしで、アップも移動もなく、歌舞伎を劇場で見ている感じ。
このように日本の映画は、先行芸能である歌舞伎や浪曲、講談、漫才等を受け継いでできたものであることがよく分かった。