高橋英樹の『男の紋章』シリーズの最後の方で8作目、監督はこれが遺作になった滝澤英輔。
滝澤は、「若草山の滝澤」と言われ、「順撮り監督」で有名で、抒情的な作風で、日活では蔵原惟繕らに影響を与えていると思う。
話は、冒頭で中年男と斬りあいになり、殺害した英樹が、母轟夕起子、恋人の和泉雅子らに見送られて旅を続けるところから始まる。
可笑しいのは相手は、山内明だが、どこにもクレジットがない。ナレーターも鈴木瑞穂だが、これもノンクレジット。当時、二人は劇団民芸だったので、ヤクザ映画はご法度だったのだろうか。女優の吉行和子は、石原裕次郎主演の『あいつと私』に出演し、60年安保で、全学連の男に強姦される女性活動家を演じ、民芸から注意され、それも理由で劇団民芸を辞めたのだそうだ。
英樹は、旅で男を磨いているのだが、そこに子分の桂小金治と谷村昌彦が追いかけてくる。
娯楽映画で重要なのは悪役だが、井上昭文、柳瀬四郎、富田浩次郎などのベテランなのでドラマは締まるが、どこか日活のヤクザ映画は、東映に比べて違和感がある。
それは、日活の方が、撮影、照明、美術等がきれいで美しいのが皮肉にも東映に敵わなかった原因だと思えた。東映は、撮影と照明が暗く、美術もダサいので、逆にリアリティと情緒があったのである。
女優は、和泉雅子の他、太田雅子(梶芽衣子)、西尾三枝子が出ているが、太田は新人で扱いは小さく、西尾の方が英樹を慕うが、本当は山内の妹で、仇の仲と言うおいしい役を演じて上である。
この1965年は、まだそうだったのだ。
チャンネルNECO