これは大映で、1947年に作られた『竜虎伝』のリメイクだと思うが、監督の森一生によれば片岡千恵蔵と嵐勘寿郎が口もきかず、一緒に立たないので、撮影に苦労したとのこと。
ここでは、鶴田浩二と天知茂で、鶴田はいつもの鶴田だが、天知が悪役の山本礼三郎の子分で、対立を避けようと奔走する真面目な男を演じて非常に良い。
話は、九州の直方から若松へ石炭輸送の鉄道を敷設しようとする柳永二郎の松澤組に対し、艀で石炭を運んできた川船頭の親分の山本たちとの対立を描く。そこに東京から殺人犯の鶴田がやってきて、本当は大陸に逃亡するつもりだったが、山本の子分が柳を襲って殺すところに遭遇し、柳の息子の千葉真一や娘藤純子を助け、飯盛り女郎の佐久間良子と良い仲になる。
そして、次第に鉄道敷設の工夫仕事に目覚めていくのは、元プロレタリア作家の岩下俊作らしい、労働賛美である。
最後、鶴田は一人で殴りこんだ千葉真一を助け出し、柳の組と決闘し、東京から追いかけてきた刑事の加藤武の縄に付く。
後に、やはり鶴田浩二のヤクザ映画で、九州の鉄道工事の話があったと思うが、題名が思い出せない。
阿佐ヶ谷ラピュタ