映画界には、時として変な作品が出るが、これも本気かどうか疑問の新東宝作品である。
監督は、名作『99本目の処女』の曲谷守平、主演は細川俊夫。かつては松竹のスターだった彼がよくこんな役をやったなと思われるほどの珍品。
昭和24年のハバロフスク収容所、多くの元日本兵が強制労働に従事させられているが、もちろん御殿場の山野。
兵のリーダーのような男が「わが祖国、ソ連邦のためにノルマを達成せよ」と怒鳴ってるが、誰かは分からず。
一方、兵舎では細川俊夫が、スターリンの絵を描いていて、そこに女医のヘレン・ヒギンズが来る。
彼女は、ロシアと日本人との間に生まれた女性で、日本のファッション・モデルの開祖の一人で、テレビでセクシーなポーズでカバー・ガールをやっていた。
ここで出て知っているのは、細川、ヒギンズの他、国方伝、御木本伸介くらいで、遠藤辰雄などの名もあるが、どこに出ているかは不明。
細川は、兵舎で絵を描いていて、「労働に出ないのは不公平だ」として、リーダーから屋外への労働に連れ出される。
そこで、反動分子とされた老人は酷使されて死んでしまう。
ついに、細川は決意する「このままでは死んでしまう、狂人を演じよう」として、異常な行動をする。
これが笑えるのだが、最高なのは、便器の中身をリーダー達に掛けて、自分で「臭いなあ・・・」と言うところ。
この辺は曲谷守平の面目躍如で、悲劇なのか、喜劇なのか分からなくなる。
ソ連側も、「偽狂人ではないか」と疑い、病院、さらに政治部に連れて行かれる。
その際、ヒギンズの運転するジープだが、速度を出しすぎて、トラックに衝突しそうになり、避けて二人はジープから飛び出され、抱き合ってしまう。
その他、ソ連の婦人兵のシャワー姿をリーダーたちが望遠鏡で覗くのや、ソ連の女性兵と日本人兵がなぜか恋仲になり、抱き合っているところに細川が来て、偶然に女性兵のスカートを剥いでしまう、大蔵貢好みのシーンもある。
細川の偽狂人の演技は続き、「フグが飛んでいる・・・」等のギャグがあるが、この辺からヒギンズは、細川に恋しているようで、彼を庇う。ソ連の町並みも出て来て、ロシア人が多数いるほか、ロシア語の看板の店もあり、新東宝にしては結構美術に力を入れている。
最後、細川にヒギンズは、「監獄に行くことになったよ」と告る。
病院に戻ると、連中は「ダモイ、ダモイ」と浮かれている。ダモイは帰国である。
監獄云々は、ヒギンズの嘘で、ダモイの前に、二人は浴室で抱き合う。
日本に戻る船上で、細川は回顧する、「俺も愛していたよ・・・」と。
衛星劇場