私は、将棋は駒の動かし方くらいしか分からず、興味もないので、この村山聖についてはまったく知らなかった。
だが、優等生の羽生善治と拮抗した破滅型の天才的棋士だと言われても、どこが感動的なのかは分からない。もともとネフローゼで節制と養生が必要なのに、飲酒とジャンクフードの摂取の上、将棋でまったく運動しない生活など、ガンになるのは当然と言うしかない。
本人も家族と周囲の者は、ただのバカ者ではないかとしか思えない。それは、作者たちが村山に異常に思入れていて客観的に描いていないからである。
第一に、青春とあるが、青春で一番重大なセックスについては、膀胱がんで摘出手術をした後、
「金玉取ったので、ビデオはいらなくなった」と言うセリフだけ。加藤一二三か誰か棋士の本で読んだことがあるが、「将棋が弱くなるので、オナニーもしなかった」とあり、その辺は大変に最重要なこととして少しでも描くべきだと思う。
それに、私のような将棋の素人にも容易に分かる、対局をドラマ的に描く技法が存在しない。
対局のシーンでは、苦悩する棋士の表情をカットバックで描くだけなので、少しもドラマチックにならない。ここは陳腐でも対局している棋士たちのモノローグを入れるべきだと思った。部外者が、テレビ映像で一喜一憂しているだけではドラマが盛上らない。
一番の問題は、松山ケンイチに愛嬌がないことで、比較するのはあまりにも無理と言うものだが、阪東妻三郎、伊藤大輔監督の『王将』の坂田三吉の演技を見習ってほしいと思うのは私だけだろうか。
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