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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『止められるか、俺たちを』

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この映画の主人公の吉積めぐみの名を聞いたのは、以前川崎市民ミュージアムでやった若松映画の特集の時の、荒井晴彦の話だった。

1960年代末の若松プロには、映画界を目指す多くの若者が集まっていた。

理由は簡単で、5社は助監督の採用をしていなかったので、監督を目指すものは、ピンク映画か、あるいは5社でのアルバイト助監督しか方法がなかったからだ。

タイトルや作品中に出てくる若松孝二作品は、ほとんど見ていることに気づいた。蒲田や川崎の二番館では、他社の作品と合わせて若松プロ映画が上映されていたからだ。

                

それだけ当たっていたのだろう。中に商業主義として批判される『カーマスートラ』も、蓮沼のヒカリ座で見ている。

新宿のフーテンで有名だったおばけこと秋山に誘われてめぐみは、若松プロの女性助監督になる。

給料はなく、暴君の若松に怒鳴られるだけの助監督、撮影助手、製作たち。

その姿は、藤田正さんが言っていた、『ミュージック・マガジン』会長の中村とうようさんにも通じるものだった。

藤田さんが結婚することになり、給料を上げてほしい中村とうようさんにと言うと喧嘩になり、

「あなたのやっていることは、日頃外に言っていることと反対じゃないか」と憤激して退社したとのこと。

零細なマスコミ企業の社長と言うものは、皆そんなものなのだろうと思う。

当時の若松プロのシナリオを支えていたのは、足立正生で、ここでは描かれていないが、彼は当時学生映画界では、問題作『鎖陰』を撮った監督として、有名な存在だった。

同時に彼は根っからの日本共産党員で、この時期からさらに過激になり、最後はパレスチナゲリラの一員になってしまう。

大島渚や葛井欣四郎らが出てくるのは良いが、なぜ唐十郎が出てこないのだろうか。彼は若松作品で主演しているのに。

最後、彼女は妊娠中に睡眠薬と酒で死んでしまう。全員、タバコを吸いすぎで、彼らはいずれ肺ガンで死ぬ運命だったと思う。

若松は、周囲のインテリ学生に対し、いろいろと批判するが、実は彼の父は獣医で、裕福な家の出なのである。

横浜シネマジャック

 

 


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