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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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製作は松崎啓治だった 『激怒する牡牛』

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松崎啓治氏の劇映画の製作作品は以下のとおりである。

1938.08.23 北京  東宝映画 1939.01.25 戦友の歌  東宝映画 1939.02.08 揚子江艦隊  東宝映画 1939.03._ 戦ふ兵隊  東宝映画文化映画部 1942.02.04 青春の気流  東宝映画 1942._._ 珠江  芸術映画=中華電影公司 1943.01.14 阿片戦争  東宝映画 1943.03.25 姿三四郎  東宝映画  ... 企画 1943.10.07 熱風  東宝映画 1945.02.22 間諜海の薔薇  東宝 1946.05.02 明日を創る人々  東宝 1946.10.29 わが青春に悔なし  東宝 1947.12.09 女優  東宝 1954.04.13 少年姿三四郎 第一部 山岳の決斗  東映東京  ... 企画 1954.05.25 少年姿三四郎 第二部 大川端の決斗  東映東京  ... 企画 1954.12.21 さいざんす二刀流  東映東京  ... 企画 1955.01.27 姿三四郎 第一部  東映東京  ... 企画 1955.02.01 姿三四郎 第二部  東映東京  ... 企画 1955.05.31 正義の快男児 中野源治の冒険 ダイヤモンドの秘宝  東映東京  ... 企画 1955.06.07 正義の快男児 中野源治の冒険 深夜の戦慄  東映東京  ... 企画 1955.06.13 正義の快男児 中野源治の冒険 完結篇 地下砲台の恐怖  東映東京  ... 企画 1955.10.18 柔道流転  新東宝  ... 企画 1955.11.15 柔道流転 黒帯無双  新東宝  ... 企画 1956.07.05 女真珠王の復讐  新東宝  ... 企画 1957.05.08 激怒する牡牛  新理研映画

ここで注目されるのは、黒澤明の『わが青春に悔いなし』だろう。これは京大の滝川事件とゾルゲ事件に関わった尾崎秀美をモデルにしていて、脚本は久板栄次郎だが、資料集めは松崎がやったと書かれている。だが、堀川弘通さんの『評伝黒澤明』によれば、黒澤は「松崎啓治や脚本家の山形雄策らは戦時中は特高のスパイだった」と嫌っていたと言っていたそうだ。

もちろん、松崎や山形がスパイだったかどうかは私には分からない。ただ、松崎は、後に松崎プロダクションを作り、PR映画やテレビ映画を多数作った。手塚治虫の『鉄腕アトム』をテレビで作ったのも松崎で、この特撮のひどさが、手塚に自分でアニメ版を作らせる動機になったと言われている。

             

また、大島渚も、松竹を首になった不遇時代に松崎に邂逅した。

だが、松崎が、国の高級役人や企業の役員となっていた、かつての京大時代の知り合いの伝手で、記録やPR映画を作っていたことに非常な違和を感じたと書いている。

要は、松崎は、時代に即し巧みに企画を立てて映画の製作を考える人だったのだと思うのだ。

それに対して黒澤明は、基本的には大変に頑固な人間で、ここに書いたように若き日のプロレタリ芸術的発想を持ち続けた監督だと私は思う。

だからこそ、一部の映画好きの連中だけでなく、普通の人たちも支持されたのだと思う。


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