1975年に松竹から公開された斎藤耕一監督作品。斎藤は、元は映画のスチールカメラマンで、ジャズマニアでもあったので、映像と音楽は素晴らしいが、ドラマは弱い。一番成功したのは『約束』と『旅の重さ』だろうか、『津軽じょんがら節』は、私はあまり良いとは思えない。
さて、これは歌手の野口五郎と江波杏子の共演で、池部良が江波の恋人として出てくる。
岐阜から江波と弟の野口が横浜にやってくる。まだ、横浜駅の東口に大きな駅舎があった時代である。横浜港から池部とブラジルに行き、そこで日本料理屋をやるためで、池部は、遅れてやって来ることになっている。
江波と野口が、恋人のようにじゃれあっているのは気分が良くないが、五郎ファンの気持ちとしてはギリギリのところで押さえている。
横浜からブラジルに行くと映画は多数あり、石原裕次郎の『俺は待ってるぜ』も、ブラジルに行ったはずの兄を探す話である。
大桟橋や山下ふ頭の景色が出てくるが、まだコンテナ時代の前の在来ふ頭である。
野口五郎は、夜に変なクラブに行く。ここは日活的な美術で、松竹のダサい美術ではなく現代的なのは、やはり日活にいた斎藤のセンスだと思う。そこには、横山リエや寺田農らの不良がいて、時代的な会話を交わしているが、田舎者の野口は疎外されてしまう。
その後、カウンターにいた可愛い子と五郎は外へ出ると、彼女は言う「私は商売なの」
ホテルに行き裸になるが、彼女は怖じ気ずいて真実を話す。本当は大学生で、地方から来ても何も学園生活で起こらないので、自分を変えようと店に来たが結局何もできなかった、「早く抱いてくれ」と言う。アイドル映画の限界でもちろん性交はなしで残念。
この子は誰かと思うと、角ゆり子で驚く。『20歳の原点』『日本沈没』等に出て一旦姿を消し、いきなりロマンポルノの神代辰巳の『嗚呼、女たち猥歌』に出たが、これで本当に辞めてしまったらしい美人女優である。ここにも出ていたのとは知らなかった。
この角ゆり子と野口五郎のシーンは、一番リアリティがあって、きれいな映像であり、斎藤耕一らしいところだろう。
だが、池部良が来てからの3人のドラマになるとトーンダウンしてしまう。一つには、野口が池部を嫌う理由が「負け犬」だからで、これは普通は逆だと思う。若者が負け犬を嫌うというのは説明が必要で、そうだとすると野口は上昇志向の強い若者となるが、そうは見えないので変だ。
最後は、山下公園で偶然に会い、一緒に遊んだ幼女の親から、誘拐犯に疑われて野口は警察に留置されてしまう。翌朝ふ頭に行くが、船はすでに出ていて、江波と池部の出航を見られない。
言うのは野暮だが、それにしても題名の『再会』と言うのは筋と合っていないと思う。それとも最初の物語とできた作品は違ってしまった結果なのだろうか。
衛星劇場