どのような経緯で、北朝鮮に入り映画化することになったのかは、不明だが、韓国の女性監督がドイツでビザを取得し北朝鮮に入国する。
初めは、平壌のスポーツ施設の職員とその家の取材で、普通の人の姿だろう。家は、家具は少ないが普通で、テレビ等があり、意外に豊かだなと思う。
だが、農村に行くと凄い。ほとんど前近代の社会なのだが、逆に完全なリサイクル社会で、これの方が良いのではとさえ思えてくる。
電気は、太陽光と風力発電で、ガスは人間と動物の糞を腐敗させて作ったメタンガスで賄っていて、これはすごいと思う。
食事は、米と野菜だけで肉や魚は見えず、極めて健康的である。飽食の故の肥満からダイエットをしている日本とは逆の正しさがある。
地方都市の元山の縫製工場は非常に面白い。
若い女性が洋服の縫製工場で働いているが、みな同じ制服姿である。朝は全員で朝礼、昼はチャイムで休憩になり、音楽に合わせた体操もあり、最後はまた反省会で成績優秀者と目標に届かなかった女子工員の名が読みあげられる。
これで、女子工員が美人だったら、まるで昔の吉永小百合主演の日活映画だ。
最後は、平壌の非常に立派な墓に参って花を捧げる家族。戦前に抗日運動で戦い、1945年4月に処刑された北朝鮮の英雄の子どもたちで、インタビューを受ける室内は、高官の家らしく華美ではないが立派に作られていることが分かる。
要は、この国では、明確な格差があることが表現されている。
ただ、全体として見れば、北朝鮮社会を見る目は、結構暖かく、昔日本での公開された、ポーランド人監督の作品『金日成のパレード』の皮肉で冷笑的な視線とは根本的に異なっている。
この辺は、やはり同じ民族、文化、習慣の下に、北朝鮮も、韓国もあるからだろうか。
横浜シネマリン