BS・TBSの『諸説あり!』で、「火事場の馬鹿力」について放送していた。
そこでは、アメリカで高校生が車の下敷きになった祖父を一人で大型車を持ち上げたことが報告されていた。
火事場の馬鹿力は、たしかにある。
私が経験したからである。
昭和33年9月に狩野川台風が首都圏も襲い、大田区池上でも呑川が氾濫し、夕方には床下浸水になり、家の周辺が川のようになってしまった。
一家は父母と5人兄弟だったが、父は小学校の校長で、学校を守るとのことで家には戻って来なかった。
次第に水が上がって来ると、母は言った。
「全部二階に上げよう!」
一階にあったタンス、畳などを母の命令で、大学生の兄、3人の娘たちでタンスの中身が入ったまま二階に持ち上げてしまったのである。
さらに畳も全部上げたのである。私は小学校4年だったので、周りでうろうろしているだけだったが。
浸水は、床上ギリギリまで来て深夜には終わったようだ。
翌日、タンスを下ろそうとしても到底できず、中身を引き出してやっと降ろしたのである。
台風の水害という土壇場で、人間は異常な力を出すものである。
その理由は、普通人間はケガをしないように、本来は出るべき力にリミッターを脳が掛けているからが、危機に遭遇するとリミッターを外してしまうからなのだそうだ。
要は、防衛本能の一つなのだろう。それが、危機の事態になるとアドレナリンが出て、リミッターを外し、通常では出ない能力を発揮するというわけである。
人間の力は実に不思議なものである。