1954年、松竹京都の時代劇だが、原作は大佛次郎、脚本久板栄次郎、監督は中村登である。
幕末の江戸の旗本の若者の市川海老蔵と尾上松緑、いずれも先代である。
海老蔵の叔父も、先代左団次で、今の左団次とは違い優男の二枚目で、謹厳実直で囲碁が趣味。
若者二人は鳥羽伏見には参加したが敗れて江戸に戻り、彰義隊には加わらず、海老蔵は榎本武揚の函館に行く。
彼には許婚の嵯峨三智子がいたが、彼女に去り状を渡して品川から沖に向かう。この辺の船頭の親父が江戸っ子の心意気で沖に逃がすあたりがいい。
五稜郭戦争も負け、行方知れずになった海老蔵。
松緑は、芸が身を助けるなんとやらで、芸者の淡島千景の世話になり、屋敷を引き払って裏町に時代だから仕方がないとと生きている。
左団次は、囲碁の教場を開くが、「肩が凝る・・・」と言って人が寄り付かない。
最後、海老蔵は江戸に戻っていたが失意の中で無頼の徒の中にいたが、偶然松緑と淡島に助けられ、嵯峨三智子とも再会できる。左団次は、妻の夏川静江とともに、徳川慶喜が行ったという静岡に行くことにする。
嵯峨三智子に横恋慕する東征軍参謀が近衛重四郎で、これも面白い配役。
大佛が、菊五郎劇団に当てて書いた戯曲なので、海老蔵、松緑、さらに左団次のニンをよく生かした劇になっていた。
また、戦後の日本の米軍による占領の状況が反映しているように見えた。保守的リベラリストだった大佛にとっても、戦後の米軍占領時代は不愉快だったのだと思う。
音楽は時代劇には珍しい黛敏郎。
衛星劇場