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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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朽木と言えば・・・

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台風5号が関西から北陸に抜けたようだ。

大雨の地点として滋賀県朽木の名があったが、朽木と言えば、溝口健二の名作『雨月物語』である。

これは、東洋的、やや中国的とも思えるエキゾシズムもあり、アメリカでも非常に評判になったようだ。

ジャズのアート・ブレイキーの曲に『UGETSU』というのがあり、なんのことかと思うと溝口の『雨月物語』のことなのである。

どこでブレイキーが『雨月物語』のことを知ったのかは、知らないが、日本を象徴する題名として使ったのだろう。

                                

 

『雨月物語』は、溝口作品としては、非常にわかりやすいもので、戦争の虚しさが強く出ていて、やはり溝口健二にも、自分は参加・従軍しなかった戦争への贖罪的な思いはあったと私は思う。

貧しい陶工の源十郎の森雅之は、市で器を買いに来た美しい姫の宮木・京マチ子に連れられて館に行き、つかの間の悦楽の時を過ごす。

だが、京と召使の毛利菊枝は、織田信長によって滅ぼされた朽木一族の亡霊であったことがわかる。

すべては、ほんの一瞬の悦楽だったとのことであり、戦前、戦中、戦後の歴史が凝縮されているとも思える。

さらにそれは、戦後すぐに作られた大阪を舞台にした映画『夜の女たち』で、ここで見える廃墟の大阪は本当に凄い。

空襲によって一面の廃墟なのであるが、こうした日本本土の都市への無差別空襲を企画し、実行したカーティス・ルメイ少将に勲一等を授けているのだから、日本国政府は一体なにを考えていたのかと思ってしまう。


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