約50年前の1966年11月に、川崎中央劇場で安田公義監督の秀作、安田道代主演の『殺人者』共に見て、衝撃を受けた作品。
今回は、昔同じ区役所にいたMさんと見るが、彼も衝撃的で「安倍首相に見せたい映画」と言った。
陸軍従軍看護婦の西桜・若尾文子は、天津の陸軍病院に派遣される。日中戦争末期で、病院には多数の負傷兵が運ばれてくるが、一方傷が癒えているのに前線逃れの不良兵も多数いる。
若尾は、夜いきなり不良兵たちに襲われる。
リーダーは、千波丈太郎で、彼は次に桜が分遣隊に派遣された時、腹部を負傷し、彼女は軍医の芦田伸介に頼んで輸血してもらうが、結局死んでしまう。
若尾は、次第に芦田に、彼女が生まれる前に死んだ父の面影を見出して、惹かれ、愛し合うようになり、この映画は戦争映画だが、純愛映画でもある。
若尾との対話のシーンでは、芦田の長い台詞もあり、やはり芦田伸介は演技が上手いと感心した。
この1960年代中頃が、若尾文子の演技のピークだったと思う。
仄聞するところでは、若尾は、愛し合っていた菅原謙次に振られて、なりふり構わぬ体当たりの演技に開眼したとのことだが、本当だろう。
増村保造は、戦場には行っていないはずだが、多くのスタッフには戦争体験者がいたので、戦場の描写にはきわめてリアリティと迫力がある。
戦場で両腕を失った兵士の川津祐介の願いで、若尾はオナニー、さらにセックスしてやるが、翌日川津は、兵舎から飛び降りて自殺してしまう。
とたんに乙武洋匡を思い出したが、彼が自殺しないのは、やはり平和のお陰というべきだろう。
横浜シネマリン