千葉泰樹監督作品で、島崎雪子がビキニ水着で宙吊になっているスチールで有名なので、一体どういう作品か見に行く。
製作・原作・脚本は八田尚之で、主演は島崎雪子と伊豆肇で、伊豆は作家志望の貧乏な若者、島崎はビキニスタイルで座敷で踊るサーカスで生まれたという無知なダンス芸者。
これに突然北沢豹の裕福な学者と愛人でこれも文学志望の美女月丘夢路の関係が出てきて、これはどうつながっているのか不明で、混乱する。
また、月丘には、ギャングの田崎潤やその仲間で骨董趣味の金持ちの竜崎一郎も惚れていて、いろいろと話は複雑に進行する。
しかし、伊豆と月丘の二人の小説が文藝春秋の新人賞になり、ここで二人が出会ってすぐ意気投合してできてしまう。文藝春秋の掲載小説家の名前に三島由紀夫が見えるのがおかしい。
伊豆の叔父が僧侶の高堂國典(『七人の侍』の村の長)で、伊豆と月丘の仲を心配して、島崎に月丘の部屋を教え、ここで三角関係が破たんする。このとき、伊豆は島崎と結婚していたのだから、当然だろうが、伊豆は島崎を捨てて月丘の方に行こうとする。
すると、月丘に惚れている竜崎が、どちらが月丘と一緒になるのか、金庫から拳銃を出して、竜崎と伊豆の二人は決闘する。
伊豆は拳銃を発射せず、竜崎は「本当に月丘を愛しているのは君だ」と月丘を譲るという。
だが、伊豆はこのとき、「本当に僕が愛していたのは島崎だ」と島崎のもとに戻る。
そのとき、月丘との刃傷沙汰から刑務所に入れられ、薬物中毒で廃人になっている北沢に月丘は無理心中させられている。
この映画は、いったい何を言っているのだろうか。
裕福で上流の月丘などより、無知で下層階級の出だが、島崎雪子のほうが良いと言っているわけで、実に戦後民主主義的思想である。
ちなみに、この作品で生きておられるのは、月丘夢路と島崎雪子のお二人だけであろう。
美人薄命ではなく、美人長命であるのは誠に喜ばしいことである。
シネマヴェーラ渋谷