1941年に韓国の高麗映画で作られた作品で、日本語版監修が飯島正になっているので、日本国内でも上映されたのだろう。
話は、ソウルの街頭に屯する孤児、今の言葉で言えばストリート・チルドレンを保護し、養育する主人公の牧師のことで、実話に基づいているらしい。
主人公は、笠智衆に似た真面目な風貌の男であり、全体としては「蜂の巣の子供たち」シリーズのような感じで、韓国版の清水宏というところだろうか。
なぜ、こうした事業を始めたのか説明はないが、彼の裕福で医者の兄が、「迷える子羊を救った」という台詞が出て来ており、キリスト教によるもの。
この肥満した男が、冒頭にソウルのカフェで酔っているが、バックに流れている音楽は、ラテンである。
韓国・朝鮮は、中国、日本という「大国」に挟まれてきたので、独自性の意識が強く、それが戦前は日本の天皇制に対しての、戦後は北の共産主義に対するイデオロギーとしてキリスト教信仰になったのだと思う。
ソウルで、花売りをしていた姉・弟らが、施設から逃亡しようとしたとき、ソウルで孤児たちを使役していた暴力団のような男たちが来て、取り戻そうとするが、主人公と兄、子供たちに撃退される。
そして、全員が、日の丸遥拝に連なり、「帝国臣民」としての誓いを立てるところは、戦時下の作品だと思える。
カメラの金井成一は、新興キネマにいて、岡崎宏三らとも知り合いで、戦後は韓国で活躍された金学成さんである。
日本語版が作られたが、当時日本ではあまり上映されなかったそうだが、やはり言葉の問題とのこと。
それにしても、当時の朝鮮の貧困は凄い。
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