1960年に公開された日活映画、原作は曽野綾子、週刊誌の連載ものらしいが、原作とはかなり違うものだと思える。
二流大学の創立者の子で理事長清水将雄の招請で、外国で学位を取ってきた秀才の中谷昇が帰国し、当初は嫌がっていたが、彼は学長に就任する。
だが、彼が実施したことは授業料の値上げで、男女の学生は、授業料の捻出に苦労する。
全員がアルバイトをしていて、その姿の滑稽さが喜劇性だが、現在ではさして面白くない。
中では、岡田真澄が貸バイク屋をやっていて、金持ち高校生から巻き上げた金で、イタリアに行ってしまう挿話くらい。横浜から貨物船で出てゆくが、昔々の大桟橋で、戦前からのもので、「あれっ」と思った。私が港湾局にいた頃の横浜港の大桟橋は、1964年の東京五輪に合わせて作り直したものだったのだ。
主人公はまじめな女学生の芦川いづみで、恋人は芦川の2年上で、非常なガリ勉の伊藤孝雄。彼が勉強ばかりしている間に、芦川は、金持ちのドラ息子の波多野憲にやられてしまい、授業料値上げのために、ついにはバーの女給からコール・ガールになるってしまう。
彼女の出生がよくわからず、立川の薬屋と説明されているが、最後姉はアメリカにいて「葬式は勝手にやってくれ」と言われるので、姉は立川基地で知り合った米軍のオンリーだったのだろうか。どうでもよいことだが、不明なので逆に気になった。
卒業の時、伊藤は「五島列島の民俗的習俗の経済学的考察」の卒論を中谷に激賞され、「東大大学院に行きなさい」と言われるが、家が貧乏で就職を希望する伊藤に、中谷は何もしてくれない。何もしない秀才なのである。
卒業祝いに、地方の名士の息子武藤章生に連れられた料亭で伊藤らが宴会を終えた後、「特別料理」として出てきたのは着物姿の女たちで、芦川もいた。絶望した芦川は、波多野を殺して自分も自殺する。
学園での葬式に現れた中谷、清水らを伊藤らは追い返すが、中原早苗は、伊藤の優柔不断が芦川を殺したと伊藤を非難する。
そして大学を辞めて故郷の炭鉱町で保母になると言い捨てる。
これは結局、中原早苗の映画で、脚本の山内久の作品であり、今村昌平の『豚と軍艦』の吉村実子の祖型になるわけだ。
曽野綾子の小説が映画化されたのは、これが最初のようだ。
神保町シアター