桜木町で『日本のいちばん長い日』を見に行くが、かなり混んでいた。
映画の出来はかなり良くて、岡本喜八監督の前作とさして変わらぬ出来だった。
原田真人の映画は、最初の『インディアン・サマー・さらば映画の友よ』や『おニャン子ザムービー』の頃から見ていて、あまり良い感じは受けていなかった。
だから、その原田が『日本のいちばん長い日』のようなシリアスな作品を監督すると聞き、非常に意外な感じがした。
だが、出来はそう悪くなく、きわめて正統的な作品になっていた。
ただ、いちばん長い日とは言うが、前作とは異なり、1945年4月の鈴木貫太郎首相の就任から始まり、8月15日までを描いているので、中身がが多く展開が早いので、歴史的事実を良く知らない若い人には逆に分かりにくくなっていると思う。
私の隣にいた若い男女の内、女性は映画の筋がよく分からなかったのか、作品の最後のタイトルに来ると、もう携帯でメールをチェックし始めた。
簡単に言えば、前半はポツダム宣言受諾に至る、鈴木貫太郎首相や昭和天皇ら和平派の動きである。ここは出てくる人間もそうは多くないので、理解は容易である。
だが、若い将校畑中らによる、クーデター、玉音放送盤の奪取と昭和天皇拉致になると、動きが複雑で、分かりにくくなる。
もちろん、クーデターは中堅将校群の保守主義、一種の事なかれ主義によって阻止されて失敗する。
これを見て一番感じるのは、旧日本軍の官僚主義、書類主義の凄さで、偽命令書を作るためにも多数の印鑑を押すのだから、それは喜劇的である。
いざと言うときにも、書類の整合性を求めているのだから、日本人は真面目だと言えるが。ここでは木場勝巳の演技が非常に良かったと思う。
最後、畑中が日本放送協会の会館で、クーデター放送を読み上げるが、送信機の電源が切られていてラジオ放送はされなかったというのは、本当なのだろうか。その前に諦めたと記憶しているのだが。
さて、この映画の一番の見どころは、舞台の建物で、多くは京都、舞鶴などの関西で撮影されたようだ。京都には、まだ戦前の建築が多く残されており、作品にリアリティを与えている。
昔、1973年に吉田喜重がATGで『戒厳令』を撮った時も、全部京都で、当時でも戦前の日本の情景を入れて映画を作るのは京都しかないと言われたが、今はもっとそうだろう。
横浜ブルグ13