用があって横浜市中央図書館に行くと雑誌『三島由紀夫研究・第二号』があり、三島由紀夫原作の映画を多数作った藤井浩明さんとの座談会を読む。
やはり、三島由紀夫が主演した『からっ風野郎』のことが中心になっている。
脚本は菊島隆三で、元は石原裕次郎にあてたものだったと聞いたことがあり、裕次郎主演作で、三島由紀夫主演映画のような卑怯未練な弱虫はおかしいと思っていた。
読むと、当初は白坂依志夫の手で、小柄な三島にふさわしい競馬の騎手の話だったが、八百長問題が描かれていて、馬主会長だった社長の永田雅一の反対で潰れた。
その時、藤井さんが、菊島隆三の脚本を思い出し、菊島から譲り受ける。
それは、勿論裕次郎用なので、異常に強い男になっていた。
それを増村保造が、ヤクザの二代目だが、弱虫で卑怯未練な男に変え、三島由紀夫も喜んで同意して演じたのだそうだ。
やはり、増村は三島由紀夫の本質を見抜いていたことになり、また自分よりも劣等な人間を喜んで演じた三島由紀夫も、自分の本質をよく分かっていたことになる。
普通は、人間は自分よりも優越した人間像を演じたくなるものだからである。