1939年の東宝映画作品で、監督は渡辺邦男、原作は中野実なので、新派の劇なのかもしれない。
下町の鉄工所のある町のアパートが舞台で、主人公高田稔と弟の伊東薫は、共に鉄工場で働いているが、素朴で無学な兄と違い弟は優秀で夜学に通っている。伊東はまじめに貯金していて50円になったと喜んでいる。
高田の友達は、同じ工員(アパートのおばさんたちは職工と言っている)仲間の小杉義男で、この喧嘩友達風の関係は楽しい。
普通は、高貴な役の多い高田稔としては、工員役は珍しい。
そのアパートに、素性の知れない女の千葉早智子が最近来た。
まさに「掃き溜めに鶴」だが、おばさんたちは怪しげに見ている。
千葉のところに亭主の三木利夫が来て、二人の間の子でもで、生活苦から他人にやってしまった子供に会わせるからと金をせびりに来る。
その金額はまさに50円。物干し台から降りてくるとき、たまたま聞いてしまった伊東は、50円を千葉に渡し、千葉はそれを三木のところに持って行ってしまう。
女の浅墓さだが、「渡辺邦男ともあろうものが新派的母物を」と思う。
話を知った高田は怒り、伊東を打つ。
住人は驚く、「そんなことのなかった仲の良い兄弟だったのに」
千葉が、カフェの女給時代の同僚の清川虹子が来て告げる。
「去年の秋に坊やはしんでいるのよ、あいつの言っていることはみんな嘘よ」
思わず千葉は床に倒れてしまう。こんなことで平気なの、渡辺先生。
と、そこに電報が来て、伊東が補充兵として出征することになる。
出征の前日、アパートで細やかな祝宴が開かれ、外で三木と会い、格闘した末に高田は、二人で部屋に入ってくる。
「明日から、彼も工場で、弟の代わりに働くのだ」と。
そして、旗行列と「天に代わりて不義を撃つ」と出征していく伊東。
まさに男たちは、戦地でも銃後でも鉄の兄弟になったと言うことなのだろう。
確かに、この昭和14年頃は、満州事変から日中戦争の軍需景気で、日本が非常に好景気だった時代なのである。
言ってみれば、軍需によって多くの人間が雇用され、三木のようなヤクザ風の遊び人でも工場で働くようになり、「完全雇用」になっていたのである。
そして、日本人の近代の歴史の中でも、ほとんどの日本人が一致団結して暴戻なるなる支那、さらに鬼畜米英に立ち向かっていた時代の記憶として今も存在するのだろう。
特に安倍晋三のような、祖父岸信介のように戦時下で大活躍された方を持つ人にとっては、格別の想いがあるのだと思う。
だから、正月の年頭所見のように「世界に輝く国」になりたいなどと世迷言を言いだすのだと思う。
日本映画専門チャンネル
下町の鉄工所のある町のアパートが舞台で、主人公高田稔と弟の伊東薫は、共に鉄工場で働いているが、素朴で無学な兄と違い弟は優秀で夜学に通っている。伊東はまじめに貯金していて50円になったと喜んでいる。
高田の友達は、同じ工員(アパートのおばさんたちは職工と言っている)仲間の小杉義男で、この喧嘩友達風の関係は楽しい。
普通は、高貴な役の多い高田稔としては、工員役は珍しい。
そのアパートに、素性の知れない女の千葉早智子が最近来た。
まさに「掃き溜めに鶴」だが、おばさんたちは怪しげに見ている。
千葉のところに亭主の三木利夫が来て、二人の間の子でもで、生活苦から他人にやってしまった子供に会わせるからと金をせびりに来る。
その金額はまさに50円。物干し台から降りてくるとき、たまたま聞いてしまった伊東は、50円を千葉に渡し、千葉はそれを三木のところに持って行ってしまう。
女の浅墓さだが、「渡辺邦男ともあろうものが新派的母物を」と思う。
話を知った高田は怒り、伊東を打つ。
住人は驚く、「そんなことのなかった仲の良い兄弟だったのに」
千葉が、カフェの女給時代の同僚の清川虹子が来て告げる。
「去年の秋に坊やはしんでいるのよ、あいつの言っていることはみんな嘘よ」
思わず千葉は床に倒れてしまう。こんなことで平気なの、渡辺先生。
と、そこに電報が来て、伊東が補充兵として出征することになる。
出征の前日、アパートで細やかな祝宴が開かれ、外で三木と会い、格闘した末に高田は、二人で部屋に入ってくる。
「明日から、彼も工場で、弟の代わりに働くのだ」と。
そして、旗行列と「天に代わりて不義を撃つ」と出征していく伊東。
まさに男たちは、戦地でも銃後でも鉄の兄弟になったと言うことなのだろう。
確かに、この昭和14年頃は、満州事変から日中戦争の軍需景気で、日本が非常に好景気だった時代なのである。
言ってみれば、軍需によって多くの人間が雇用され、三木のようなヤクザ風の遊び人でも工場で働くようになり、「完全雇用」になっていたのである。
そして、日本人の近代の歴史の中でも、ほとんどの日本人が一致団結して暴戻なるなる支那、さらに鬼畜米英に立ち向かっていた時代の記憶として今も存在するのだろう。
特に安倍晋三のような、祖父岸信介のように戦時下で大活躍された方を持つ人にとっては、格別の想いがあるのだと思う。
だから、正月の年頭所見のように「世界に輝く国」になりたいなどと世迷言を言いだすのだと思う。
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