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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『侍』

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1965年の岡本喜八監督作品で、岡本というと戦争アクションの『独立愚連隊』シリーズを揚げる人が多いが、私はこの『侍』や『大菩薩峠』のような時代劇が好きで、この『侍』を見るのは、多分5回目くらいだ。
話は、「人を斬るのが侍ならば・・・」の郡司次郎正の『侍ニッポン』の新納鶴千代で、桜田門で暗殺された井伊直弼を、実子の彼が殺したというもの。
戦前から作られていて、戦後は東千代之介が主演し、唄も歌ってヒットしたが、この新納のニヒルな感じと東はよく合っていたと思う。



主人公の鶴千代は三船敏郎で、井伊直弼は松本幸四郎(先代)、鶴千代の運命を狂わせるお菊と菊姫の二役は新珠三千代、水戸天狗党残党の暗殺団の首領は伊藤雄之助と豪華な配役。
最後は、誤った情報で井伊側への内報者として、三船が殺すことになる友人が小林桂樹の栗原で、この二人が異常に強いのだが、小林桂樹が剣豪という映画も珍しが、二人の友情とその悲劇も痛切である。
三船が大河端で小林を待ち伏せし、いきなり小林に切り込むと小林は言う。
「なぜだ、なぜだ、なぜだ」この台詞だけ言って小林は三船に斬られてしまう。
小林の妻は八千草薫で、「匂うように美しい」とは、彼女のことだ。
本当の裏切者は、平田昭彦であることが分かり、伊藤雄之助によって刺殺される。
その時、小林の殺害の無意味さに怒る三船に伊藤は言う。
「もっと血を冷まさなければならない。直弼の血を流すには、こっちの血も流さなくてはいけないのだ」
伊藤雄之助のニヒルな異常さも凄い。
そして、3月3日の雛祭りへ都城する井伊直弼一行に斬りこんで行く一団と、そのアクション・シーンの凄さ。
これぞチャンバラ映画の醍醐味であり、岡本喜八のやりたかったことだと思う。
また、重厚な画面は、撮影の村井博のものだとも思える。村井は、元は大映にいたカメラマンで、なぜか大映を出て、この時代は東宝系の会社で活躍されていた。
一団の動静を記録しているのが江原達怡で、わざと小学生が作文を読むように無表情で読み上げている。
最後は、田村奈巳が店番の茶屋で動向を見守っていた江原も斬り合いに飛び出していき、結果堀に落ちて、記録はすべて水に消えてしまう。
原作者の郡司は、昭和初期の「流行作家」だったが、長くは続かず、大洗で船宿をやっていたのに会ったと、映画関係者が書いていた。

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