1973年に松竹で、黒澤明版の『野良犬』をリメイクしたこの作品は、あまりできは良くなかった。
この映画の題名だが、長嶋茂雄が学生時代に後輩に向かって、
「黒澤明の「のよしけん」はいい映画だから見に行け」と言ったという都市伝説があったが、久保田次郎の本に本当に書いてあることだ。
久保田は、かなり虚言壁のある人だったようだが、これは本当らしい気もする。
さて、ここでは志村喬・三船敏郎の刑事コンビの代わって、芦田伸介・渡哲也になっている。
芦田の妻は赤城春恵で、娘は松坂慶子。
しかも、同じ署ではなく、渡哲也は目蒲署、芦田は警視庁の監察部門の刑事になっている。
渡が、数人の若者に拳銃を奪われ、それで撃たれて、逃亡される。
秘密捜査が進められて、その間で横浜の海浜地区に住む沖縄の若者たちであることがわかり、さらに立川での事件で拳銃が使用される。
沖縄の連中を追っている中で、芦田は川崎駅まで銃撃されて死んでしまう。渡は、仲間だった少女を追ってバスで川崎から新宿に行き、さらに乗り換えて晴海ふ頭に行く。
沖縄行きのフェリーにいるはずの最後の男に会い、死んだ仲間の骨を届けるためである。
私は、いつもここで躓いた。なぜなら、東急バスで川崎から東京へ北上するバスはあるが、五反田止まりで、新宿まで行かすのは無理である。
だが、今回新宿を出たバスが、四谷あたりから皇居のわきと警視庁を過ぎた時、「本当はここで、少女に拳銃を発射させていれば」と思った。
「沖縄の人間の敵は、大内山の彼方だ」と明確にメッセージでき、長谷川和彦の『太陽を盗んだ男』に先駆けたのにと思った。
今回、この映画を見に行ったのは、少女たちが住み込んでいる木造アパートがどこにあったものか、確かめたかったのだ。
大画面で見てもはっきりしなかったが、たぶん金沢区六浦にあった旧軍施設で、当時は「生保アパート」とよばれた市営住宅ではないか、と終了後に、『ディープヨコハマを歩く』の佐野亨さんと話したが、
「たぶん、そうでしょう」とのことだった。
シネマベティ