田中裕子が嫌いなので、見ていなかったが、ここではまあ悪くなかった。
監督の三村晴彦の演出力だろう。彼は、早稲田の劇団自由舞台にいたそうで、鈴木忠治らが抜けた後の世代である。
脚本に加藤泰が入っているので、下層の人間の田中や、土工の金子研三らをきちんと描いているのはさすがで、加藤の性か、汐路彰が旅館の親父で出ている。
話は、戦時中に起きた土工の金子研三殺しで、刑事の渡瀬恒彦が、娼婦の田中の仕業と決めつけたが、本当は少年の犯行ではないかと考えなおして、その回想記を出すが、その会社の社長が、少年が大人になった平幹二郎という偶然。
ここは、偶然なのか、渡瀬は、目星をつけていて、本の制作を依頼したのかは、よく分からない。
医者の加藤剛を含め、平、渡瀬、さらに三村晴彦とみな死んでいるが、金子研三はどうなのだろうか。
黒テントの後は、明治座の演出などもやっていたが、どうしたのだろうかと思った。