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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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2本の『北海道』

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2本の北海道とは、岩波映画が作った2本の北海道電力発注のPR映画で、1955年の『北海道』と1962年の『わが愛、北海道』である。

黒木和雄監督の『わが愛、北海道』を見るのは、たぶん3回目で、清水邦夫の脚本のナレーションのテンションの高さがすごい。

                

また、撮影の清水一彦の画面の美しさもよい。主人公及川久美子(後の真理明美)の可憐さはもとより、長靴工場などの彼女の同僚もみなきれいであり、その他、各地で働いてゐる女性たちの生き生きした表情も良い。相当に、彼女たちと撮影スタッフとの間に良好な関係ができていたからだろうと思う。

だが、ここで取りあげられている産業、石炭、漁業、パイロットファームの酪農、製鉄のほとんどが、残念ながら不振なものとなっている。

そして、この日は、黒木の『恋の羊が海いっぱい』も同様に、移動、スローモーション、アップやロングなどの様々な技巧が駆使され、ここではミュージカルになっている。その冒頭に、歌うペギー葉山が、都会の街路を歩いてくるが、その背景はかつての赤坂あたりの街路にも見えるが、セットのようにも思える。後に、ルルーシュが作ったミュージカル映画『ロッシュフォールの恋人たち』で、彼が町を華麗な色彩で塗り替えたように、その街路も、朝倉摂の美術で作ろ変えたように思える。

そして、この夜は、特別上映として1955年に岩波映画が北電の予算で作った桑野茂監督の『北海道』の抜粋も上映された。これは、非常にオーソドックスな撮影法で、当時の普通の企業PR映画だった。

その黒木作品との違いは、炭鉱でのキャップランプを付けた鉱夫達の描き方にある。桑野作品では、坑道を歩いてくる鉱夫たちが普通に捉えられているが、黒木作品では、暗黒にキャップランプの光だけが揺れ動き、まるで蛍の群れのようにみえるのだ。

連合会館

 


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