冒頭に、2部、3部の回想が流れるが、武蔵は呟く、
「われ、事において後悔せず!」
これは、数々の決闘において、勝つことが第一で、武士道など関係ないとのことだろう。
特に、武蔵のような孤剣の場合、ともかく一人で戦うのだが、ともかく生き抜くことが重大で、そうでなければ死んでしまうのだから。
武士道も、江戸時代が平安になった中期以後に作られたものであり、戦国から江戸初期では、なによりも生き抜くことが重要だったのである。
ここでは、佐々木小次郎との決闘に行く前に、武蔵が江戸の近郊の農地で、盗賊に対して村人を助ける挿話があるが、「これは黒澤明の『七人の侍』の影響だなあ」と思う。
それは、伊藤大輔でも同じで、映画『地獄花』では、草原を騎馬の大群が疾駆するシーンがあり、これも黒澤の影響だと思う。
内田吐夢、伊藤大輔の二大巨匠ですら、黒澤明の『七人の侍』を無視しては、時代劇が出来なくなったいたことを現わしていると思う。
佐々木小次郎は、どの作品でも過剰なほどの美男剣士で、ここでは高倉健で、この頃は美男俳優だったのだなと思う。