先日、NHKで、国家総動員法による徴用について放映していた。
それは、主に軍需工場に徴用された人のことだった。
だが、これとは、別に日本の映画会社に徴用された人たちもいる。
三好十郎や田中千禾夫らである。
言うまでもなく、三好十郎は、左翼活動をしていたので逮捕され、以後はあまり目立った劇作が出来なくなったいた。
また、田中千禾夫は、長崎の御殿医の家柄で、きわめて裕福だったので、大学を出てからも特に就職せずにいた。
こうした連中にも、国家総動員法は、戦争体制への参加を求めたので、彼らは、東宝の前身であるPCLに入って脚本を書くことになる。
皮肉にも、戦時体制は、「完全雇用」を実現してしまうものなのだ。
三好は、シラーの戯曲を基にして、映画『戦国野盗伝』のシナリオを書く。
この滝澤英輔監督のサード助監督だったのは、黒澤明で、彼はこの時の御殿場ロケで、馬の疾駆を映像化するアイディアを得た、と『蝦蟇の油』の中で書いている。
また、この頃に、三好十郎が位置していた「非共産党左翼」という立場は、戦中、戦後の黒澤明の位置にもなったと思える。
その意味では、国家総動員法が、戦後の『七人の侍』を生んだともいえるのではないかと思うのだ。