1996年、日本アートシアターギルドの社長でもあった佐々木史郎が自分の会社で作った作品。
脚本・監督は長崎俊一、主演は不動産屋の玉置浩二と市役所職員のラサール石井。
二人は、学生時代は同じ野球部仲間で、玉置の誘いで、久しぶりにバーで会う。
そこに謎の美女の水島かおり(霧子)が現れて、3人は意気投合し、青春時代のような日々を過ごす。
玉置は、土地の開発事業のために、ラサールの同僚に紹介してもらう魂胆があったが、それも嫌々ながらすると、玉置と水島は、モデルハウスで同棲するようになる。もちろん、彼には妻も子供もいたのだが。
また、ラサールも霧子が忘れられず、電話して、その家に行くと、彼女は歯医者の内藤剛志と結婚している。
だが、内藤は、「彼女の行動を制止できない・・・」と言い、多数の写真を撮っていて、医院の待合室に飾っている奇妙な男だった。
一方、ラサールは、役所の仕事の傍ら、小説を書いて雑誌に投稿していて、ついにはそれが通って単行本の『ロマンス』になる。
霧子の趣味は、UFOを見ることで、3人は、小山に上ってUFOを見たりする時を送るが、ラサールは、「この頃が一番楽しい時だったなあ」と思う。
霧子と玉置の生活も次第に食い違うようになり、土地の開発も別の会社のものになる。
それを言いに行ったとき、玉置は、バーで、そんなこと気にしないと言い、ラサールをモデルハウスに連れて行くと、水島は、タクシーを呼んでいて、「出かけるの」と言い張る。
その時、ラサールは
「お前に行くところは、どこにもないんだよ!」というが、彼女はタクシーに乗って出てゆき、二度と戻らなかった。
そして、玉置は、地主を脅していたことで、脅迫等で1年半の刑になる。
数年後、ラサールは、町で偶然に水島に会うが、なにも聞かずに別れる。
これで終わりである。
佐々木と長崎は、「プロが作った自主映画」を目指したそうで、役者たちの抑えた自然な演技も悪くはない。
また、地方都市(撮影場所は、宇都宮のよう)の若者の鬱屈して、どこかに行きたいという気持ちもよく分かる。
だが、これでは本当は結末になっていないのでは私はと思った。
ラストは、「その後、霧子の行方は分からなくなったが、ある事件に巻き込まれて殺されたと聞いた」というような通俗的な結末にすべきだと私には思えた。
この霧子は、いわゆる「多重人格」であり、どこかに行きたい人間だと思うのだ。
このように筋をしておけば、「ススキノ事件」を予測する傑作になったとも思えるのだ。