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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『眠狂四郎・人肌蜘蛛』

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「眠狂四郎」シリーズも多くの作品があるが、これは見ていなかったので、見ると面白い。

監督は安田公義で、あまり評価されないが、私は好きだ。

1966年に、川崎中央劇場に増村保造の『赤い天使』を見に行って偶然見た安田道代主演の『殺人者』を見て、びっくりしたのだ。

この人は、抒情的なのだが、画面も良いのだが、それもそのはず美術学校出なのだ。だから、当然コンテ主義で、内藤昭の本によれば、全編完全なコンテのスケッチがあり、それに従って撮っていく方法だったようだ。

                  

話は、甲府に徳川家斉の妾腹の子の土門家の兄・妹、川津祐介と緑魔子が支配していて、領民を城に拉致しては、殺している。

緑は頭痛持ちで、それを血を見て癒すためなのだ。また、川津は密かに緑を恋している怪しげな関係。乳母が岸輝子で不気味なところが良い。

そこに江戸から、吟味役渡辺文雄がやってきて、二人を諫めるが、聞かず。村の青年寺田稔と恋人三条魔子との関係もあり、ダブル魔子映画である。

もちろん、最後は狂四郎と川津、さらに城の手下らとのチャンバラになり、例の狂四郎の連続の分解写真の剣術も見せてくれる。

このように、見せ場は普通でも悪くない映画だが、その割に安田公義の評価は高くないが、それは旧日活の合併劇が関係していると私は思う。

よく知られているように、戦時中の映画法の施行によって、20社くらいあった劇映画は、東宝、松竹の2社に、100以上あった文化・ニュース映画社は、電通、理研、日映等の4社に統合することになった。

このとき、猛反対したのが元日活の永田雅一で、旧日活、新興キネマ、大都映画の3社を合併させて大映を作り上げてしまう。ただ、これは日活という大企業を、新興キネマという零細企業が飲み込んだ合併劇だった。

その結果、旧日活勢は、「窓際族」に追いやられ、伊藤大輔、内田吐夢の大監督も例外ではなく、内田に至っては、最後には満州に行くことになってしまう。

逆に大手を振って作品を取り出したのは、旧新興勢で、森一生は、大映の中心になる。

こうした情勢の影響を安田も受けたのだと私は思う。彼は、あまり高い評価を大映で受けなくなったのではないかと思える。

だから、『座頭市』『眠狂四郎』『赤胴鈴之助』『大魔神』など、大映のヒットシリーズを順に監督し、多くは水準の高い作品を作っていながら高い評価を受けなかった原因に見えるのだ。

1939.06.01 春秋一刀流  日活京都  ... 助監督 1939.11.15 三味線武士  日活京都  ... 助監督 1941.11.28 江戸最後の日  日活京都  ... 演出補 1942.03.25 宮本武蔵 一乗寺決闘  日活京都  ... 演出助手 1944.02.24 お馬は七十七万石  大映京都 1948.09.28 その夜の冒険  大映京都 1949.02.28 最後に笑う男  大映東京 1949.06.12 母恋星  大映京都 1949.11.20 待っていた象  大映京都 1950.05.13 禿鷹(コンドル)  大映京都 1950.07.08 海賊島  大映京都 1950.09.09 虚無僧屋敷  大映京都 1950.12.23 鉄路の弾痕  大映京都 1951.03.31 赤い鍵  大映京都 1951.06.08 情炎の波止場  大映東京 1951.08.10 右門捕物帖帯とけ仏法  新東宝=綜芸プロ 1951.12.14 十六夜街道  大映京都 1952.07.10 振袖狂女  大映京都 1952.09.04 佐渡ガ島悲歌  大映=新映画 1953.01.09 母の瞳  大映東京 1953.05.06 悲恋椿  大映京都 1953.10.07 砂絵呪縛  大映京都 1953.10.27 続砂絵呪縛雪女郎  大映京都 1954.01.15 怪盗まだら蜘蛛  大映京都 1954.05.03 舞妓物語  大映京都 1954.07.06 関八州勢揃い  新東宝 1954.10.13 伊達騒動 母御殿  大映京都 1954.12.22 潮出来島 美男剣法  大映東京 1955.04.19 鬼斬り若様  大映京都 1955.06.26 踊り子行状記  大映京都 1955.12.28 新諸国物語 オテナの塔 前篇  宝塚映画=東宝 1956.01.08 新諸国物語 オテナの塔 後篇  宝塚映画=東宝 1956.02.12 白井権八  宝塚映画 1956.04.11 忍術武者修業  大映京都 1956.05.25 忍術選手権試合  大映京都 1956.06.08 月夜の阿呆鳥  大映京都 1956.08.01 折鶴七変化  大映京都 1956.08.08 続折鶴七変化  大映京都 1956.12.19 母白雪  大映京都 1957.06.04 二十九人の喧嘩状  大映京都 1957.08.13 赤胴鈴之助 鬼面党退治  大映京都 1957.08.25 赤胴鈴之助 飛鳥流真空斬り  大映京都 1957.09.21 赤胴鈴之助 新月搭の妖鬼  大映京都 1957.12.28 赤胴鈴之助 一本足の魔人  大映京都 1958.02.05 花太郎呪文  大映京都 1958.05.19 風来坊一番勝負  大映東京 1958.07.13 女狐風呂  大映京都 1958.08.31 花の遊侠伝  大映京都 1959.01.22 天竜の鴉  大映京都 1959.05.08 紅あざみ  大映京都 1959.06.13 千代田城炎上  大映京都 1959.12.20 月影兵庫 上段霞斬り  大映京都 1960.03.16 よさこい三度笠  大映京都 1960.05.11 お嬢さん三度笠  大映京都 1960.06.26 怪談累が淵  大映京都 1960.09.09 元禄女大名  大映京都 1960.11.09 一本刀土俵入  大映京都 1961.01.09 晴小袖  大映京都 1961.04.16 飛び出した女大名  大映京都 1961.05.31 美少年変化  大映京都 1961.07.19 磯しぶき源太  大映京都 1961.09.15 すっとび仁義  大映京都 1962.05.30 雨の九段坂  大映京都 1962.06.24 雲右ヱ門とその妻  大映京都 1963.05.29 対決  大映京都 1963.11.30 座頭市喧嘩旅  大映京都 1964.05.23 眠狂四郎円月斬り  大映京都 1964.09.05 外人墓地の決斗  大映京都 1964.12.30 座頭市関所破り  大映京都 1965.05.01 眠狂四郎魔性剣  大映京都 1965.09.18 新・鞍馬天狗  大映京都 1966.04.17 大魔神  大映京都 1966.10.01 殺人者  大映京都 1967.01.03 座頭市鉄火旅  大映京都 1967.02.25 東京博徒  大映京都 1967.06.17 悪名一代  大映京都 1967.11.15 やくざ坊主  大映京都 1968.03.20 妖怪百物語  大映京都 1968.05.01 眠狂四郎人肌蜘蛛  大映京都 1968.08.10 座頭市果し状  大映京都 1968.11.16 続・秘録おんな牢  大映京都 1969.02.22 博徒一代 血祭り不動  大映京都 1969.03.12 東海道お化け道中  大映京都 1969.06.14 女左膳 濡れ燕片手斬り  大映京都 1969.11.01 二代目若親分  大映京都 1970.06.20 怪談累が渕  大映京都 1971.01.13 新座頭市 破れ!唐人剣  勝プロ=大映(京都撮影所) 1973.04.21 新座頭市物語 笠間の血祭り  勝プロ 脚本 1971.01.13 新座頭市 破れ!唐人剣  勝プロ=大映(京都撮影所) その他 1935.06.15 丹下左膳余話 百万両の壺  日活京都  ... 記録

安田公義は、1983年、73歳で亡くなっている。


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