1965年、東京オリンピックから1年と言っている。
主人公は、商社マンの園井啓介と旅行代理店の鰐淵晴子であり、この頃、やはり海外への憧れは強かった。
私は、高校3年で翌1966年に大学に入るが、当時海外旅行の経験がある人は、東宝の田中友幸氏の息子のTさんしかいなかった。
園井は、ニューヨークから自殺した妻の遺骨を抱いて帰国したのだが、彼女がなぜ自殺したのかが、最大のサスペンスになっている。
鰐淵には、つきあっている平凡な男がいるが、園井の今度はロンドンへの渡航手続きで、彼に会うたびに園井に魅かれていく。
彼の妻の自殺の原因を明らかにするのは、銀座のバーのマダムの久保菜穂子で、彼女は、園井の妻と高校時代の同級生で、実は、園井の会社の同僚の待田京助と関係があったからなのだ。
待田曰く、「俺は、彼女を出世コースに乗っていた園井に取られたんだよ・・・」
社内の出世、社長就任の競争等も描かれ、全体にテンポは早く、上手くできているのは、さすがに番匠義明監督である。
番匠や市村泰一らは、ヌーベルバーグ以後の松竹で頑張っていた監督である。
だが、松竹の後退は続き、山田洋治の『男はつらいよ』以外のヒットは亡くなる。
番匠も、これが最後の映画となり、以後はテレビに行くことになる。
衛星劇場