WBCが盛り上がっているが、巨人と無関係なところが非常に良い。
そして、投手に関しては、細かな球数制限があり、これも投手を守るルールで良いと思う。
そして、このルールは、どうやら生命保険会社の力があるらしい。
アメリカでは、あらゆる事業、分野に保険が適用されており、事業実施のリスクに備えている。
だから、新人選手が、入団する時には、厳格な身体チェックがあるが、これも保険会社との契約によるもののようだ。
つまり、球団は、きちんとした肉体の選手を適切に使用しないと、選手が故障したときに払われるはずの保険金が支払われないと言うことになるからだ。
われわれが、こうした保険の実態を知ったのは、黒澤明の『トラ・トラ・トラ』監督の降板の際の保険会社の調査だろうと思う。
映画製作にあたって、多くの制作会社は様々な保険をかけている。
その一つに、スタッフ、キャストの変更があり、理由が妥当なときは、損害に対して保険金で補填されるのだ。
黒澤の監督降板は、「大事件」だったので、降板の翌年にアメリカの保険会社が調査に来たそうだ。
その時の結果は、「黒澤は気が狂ったので、これは予測不可能な事件であり、黒澤プロは、20世紀フォックスに損害金を払わなくて良い」との結論だった。
これで、黒澤プロは、ホッククスに違約金を払わないで済み、倒産の危機を免れたのだ。
だが、この決定を下したのは、当時社長だった菊島隆三で、このために黒澤は、菊島を絶対に許せず、二人は完全に決裂してしまう。
これによって黒澤明は、『用心棒』『椿三十郎』という大ヒット作の原動力であった菊島の力を失うのである。
その後は、黒澤明の周辺には、黒澤和子、黒澤史郎という「家族」しかいなくなり、完全に個人企業、零細企業となってしまうのである。
個人企業の悲劇というべきだろうか。