こう書くと不謹慎と言われるかもしれないが、近年一番に笑った作品である。
早川雪州が演じる山下が、非常に世間離れしていておかしいからだ。
本当に見ていて、実におかしい。
もちろん、敗戦直前のフィリピンの戦況自体が、悲喜劇的なのもあるが。
山下が、フィリピンに赴任し、ルソン島が決戦だと言われていたのが、すぐにレイテが決戦だと変更される。
山下は、現地の防備がひどいことに唖然とするが、同時にこの作戦変更にも驚く。
だが、軍人は命令に従うのもだとして、参謀長として新作戦を持ってきた武藤章元軍務局長の指示に従って作戦を遂行するが、もちろん米軍の圧倒的勢力に叶うわけもなく、敗走に次ぐ敗走。
そして、軍隊以上に悲劇なのが在留邦人で、軍と一緒に逃げて、これもほとんど飢餓地獄。
中でも、信欣三と戸田春子夫妻と子供の飢餓は最たる悲劇である。
逃亡する日本人女性の中心は、香川京子かと思ったら、元宝塚の宮城野由美子だった。
そして、日本は負けたとの知らせが来るが、真空管が壊れていて、ラジオが聞けないが、ともかく山下は、再度交戦しようとする部下を抑えて投降する。
山中で最後まで戦おうとする連中はいたのである。
米軍の裁判で死刑が宣告されて、ガス室で死ぬ。
実におかしな映画だった。監督は、後に「昭和残侠伝シリーズ」を作る佐伯清である。