昨年、亡くなっていた下川博について、書いて與おきたい。
「下川って誰だ」と言われるだろうが、私の大学時代の友人の一人で、彼と二人で劇団異立社(ことだてしゃ)を作って、約3年間やったのだ。
異立ってなんだ、と言われるだろうが、当時もいつも聞かれたことだった。
これは、保田與重郎の本にあった言葉で、異なる言説をたてることの意味で、異論に似た意味だろうと思う。その多くは、「異立の歌」というように使われたようだ。つまり、普通ではない事を言うのである。まあ、われわれにふさわしいと思われた。
さて、下川は、『ミュージック・マガジン』に原稿を書いていたこともあり、音楽に普通の興味はあった。
彼に誘われて見に行ったのは、ジャズシンガーの阿川泰子のコンサートで、昔の神奈川音楽堂で、そのj下手さには二人ともあきれた。
ただ、元文学座研究生だけあって、俳優の物まねは上手いなと思った。錦
彼女は、萬屋錦之助主演のテレビ映画の『破れ傘刀舟』に出たことがあり、
「てめえ達は人間じゃねえ」の錦之助の物真似は結構様になっていた。
彼と当時結婚していたYさん、私の妻と、その弟夫妻の6人で行ったのは、東京ドームで行われたアムネスティ・インターナショナルの「ヒューマン・ライツ・ナウ・コンサート」で、ブルース・スプリングスティーには全員が感激したものだ。
だが、この3組の夫婦は、全部が離婚しているのは、時代というべきだろうか。
彼ともう1回見に行ったのは、読売ランドで行われたナイジェリアのサニー・アデの2回目の来日ライブで、この時は大高正大夫妻と一緒だった。
その他、下川とは、渋谷公会堂でのオーネット・コールマンのコンサートにも行ったことがあり、この時は、終わると吉本隆明が出ていくところで、二人で、
「吉本だ!」と言い合った。