下川博で、もう一つ書いておきたいのは、彼は私と劇団を作る前、いろんなところに顔を出していたらしいことだ。
その中に、文化学院の演劇グループがあり、そこで知り合った女性に近藤さんという人がいた。
彼女は、まじめで良い方で、確か当時すでに年下の大人しい男の人と結婚していた。
近藤さんは、我々の芝居の衣装もやってくれていたが、ときどき彼女たちの阿佐ヶ谷の下宿に行って飲むことがあった。
その時、彼女から
「ユーミンは、荒井さんの妹よ」と言われ、
下川も「ああ、そうか」と言った。
それは、彼らの友人の家でのことで、たぶん文化学院の人たちの集まりだったのだろう。
そこに荒井さんの妹の由美も顔を出したというのだ。
当時、荒井由美は、まだ高校生だったはずだが、その頃からレコード会社に出入りして、曲を売り込んでいたんだと近藤さんは言っていた。
そして、荒井由実も、芝居をやっている連中はどういう者かと見に来たのだろう。
そして、たぶん「ださい、貧乏な連中だな」と分かって縁を切ったのだろうと思うのだ。