巨大な鯨と戦う男達の映画で、今では絶対に作れない作品である。
鯨と言うと、結構感情的になる人が多いが、私は別にそうではない。
鯨の竜田揚げの給食も食べたことはないので、美味しかったという記憶もない。
ただ、食文化は、人間の一番の根底にあるもので、それは人種差、民族差が大きいものなので、他人種がある人種・民族の食文化を云々するのは間違いだと思う。
その意味では、反捕鯨運動は、欧米人の偏狭さの現れだと言えるだろう。
場所は、明かでないが多分九州に、鯨漁を生業とする村があり、鯨長は、志村喬で、鯨神が来たとき、
「あれを捕った者には娘を上げる!」と宣言する。
村の小屋には、鯨採りの多数の荒くれ者がいて、その一人が勝新太郎で、「紀州」とよばれている。
村には、本郷功次郎もいて、彼は貧しい家の娘・藤村志保と恋仲である。
だが、娯楽劇の当然の筋書きで、藤村は、勝新に襲われてしまう。
そして、ついに鯨神が来て、全員で漁に出る。要は、多数で銛を投げて突いて、殺すのである。
ときどき、鯨の目が動くのが不気味である。
ついに本郷が鯨の頭に飛びつき、銛を刺すと吹き出る血。
その黒い墨汁のような血を見たら、グリンピースは卒倒するに違いない。
次いで、勝新が飛び乗り、鯨の頭を突き刺す。
この残酷さはすごい。
だが、鯨神も海岸に打上げられて死ぬが、勝新と本郷の二人も死ぬ。
最後、藤村は子を産むが、それが自分のではなく、勝新の子であることを知っていて、静かに本郷は死んでゆく。
これは、明治時代のことらしく、時代的には時代劇だが、なぜか大映東京撮影所でつくられているのは不思議。
監督は、学徒動員で出征して戻って来たニヒルな田中徳三。
原作は、これによって芥川賞受賞者だが、1980年代に多数のロマンポルノの原作を書いた宇野鴻一郎という不思議。
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