『抱かれた花嫁』は、浅草で寿司屋をやっている望月優子の話で、長女は有馬稲子、長男は大木実で劇作家、次男は田浦正巳で大学生だが、浅草の踊子の朝丘雪路と恋仲になっている。
望月は、店の看板娘有馬を早く結婚させようとし、銀座の袋物屋の息子永井達郎と見合いをさせ、永井も店で働く。
実は、有馬は動物園の技師の高橋貞二と恋仲なのだが、煮え切らない高橋との仲は、進行しない。
最後は、潮来に行ってしまった有馬を追って高橋が行き、ハッピーエンドとなる。
だが、望月は、昔は浅草で、浅草オペラ歌手の日守新一と恋仲だったことがあるのだ。
店のために、日守との愛を諦めて寿司屋をやったのだ。
この戦前の愛と、戦後の自分の娘有馬との関係は、小津安二郎の唯一の失敗作『東京暮色』を陽画にしたような作品に見えるのだ。
『東京暮色』で、田浦正巳と関係して妊娠してしまい、自殺にまで行くのは、有馬稲子なのだ。
監督の番匠義昭は、娯楽映画専門監督として、深く考察されたことはないが、意外に意味があるのではないかと私は思うのだ。