西河克巳監督は、「メロドラマが成立するのは、戦争や革命などの大事件が必要だ」と言っている。
『風と共に去りぬ』は、南北戦争だし、日本の『君の名は』も太平洋戦争で、特に東京大空襲が映画の始まりになっている。
この1955年の松竹大船のメロドラマは、その意味では、太平洋戦争はおろか、米軍占領も終わった1955年なので、その分ドラマは苦しい。
冒頭に、へねっ返り娘の淡路恵子が、車を運転していて、従兄弟の川喜多雄二を助手席に侍らしている。
雨の中で、飛び出してきた少年を跳ねてしまい、病院に少年を運ぶ。
そこに美人看護婦の藤乃高子がいて、ここで川喜多と藤乃は、あい惚れしてしまうのだ。
翌日、川喜多は、少年の家を見舞いに行くと、浅茅しのぶに会う。
この浅茅は、実は川喜多の叔父で、大会社社長の柳永二郎の妾なのだが、川喜多はまったく知らない。
彼は、貧乏出版社の編集者で、給与が少ないので、都立定時制高校の教師をやっている。
そこの生徒の一人が清川新吾で、なんとその姉は藤乃なのである。
看護婦の藤乃を医者の永井達郎が追いかけているので、藤乃は嫌がって病院を辞めるなどがある。
こう書いていて、嫌になるが、要は、川喜多を藤乃と浅茅が追いかけ、さらに淡路も参加するという構図で、なんとも狭い世界でのドラマで、私はこういう狭い世界のドラマが嫌いなのだが。
いろいろあるが、浅茅は柳の妾から自立するが、柳は不正経理で逮捕されることになり、自殺してしまう。
もちろん、川喜多と藤乃が結ばれてエンドになる。
『君の名は』で、岸惠子をいじめる夫の川喜多雄二が、善玉の二枚目というのはかなり違和感がある。
また、藤乃と浅茅が似た感じなので、「これはどっちか」と混乱する。
本筋とは関係ないが、大坂で浅茅の友人として出てくる草笛光子が、はつらつとしていて良い。
衛星劇場