1993年4月、新宿の映画館で柳町光男監督の『愛について、東京』を見たとき、中国人らしい女性がすぐに言った。
「嘘、ばっかり」
そのとき、私もそう思った。
柳町の映画は、この最初の作品以外は見てきたが、いつも感心したことがない。
このやらせドキュメンタリーも予想どおり、まったく面白くないものである。
だが、これは安田生命ホール等の自主上映で、大ヒットして東映に買い上げられ、柳町の出世作となった。
なぜ、この著しく退屈な映画が当たったのだろうか。
たぶん、撮影された連中が自分はどう映っているのか興味があって見に来たのだろうと思う。
新宿の暴走族ブラック・エンペラーの映画だが、暴走も暴行もなく、要はまったくドラマがない。
ただ、連中が喫茶店で屯して、タバコを吸って話をしているだけである。
これを見て思ったのは、いつの時代でも若者は、淋しくて自分たちで集まっているのだな、と言うことだ。
今は、若者は、どうしているのだろうか、ネットやユーチューブの世界に屯していると言うことなのだろうか。
横浜シネマリン