1950年の大映映画。
こういうのを見ると、いかに日本映画界は、シャレた映画を作れないかがよく分る。ハリウッドなら、かなりましな作品になったと思う。
原作は、石川達三で、戦前のもののようだが、やたらにアプレ・ゲールなどの台詞が出てくる。
京都撮影所なので、場所はどこか不明だが、銀座のような道を三条美紀が貧相な姿で歩いて来て、ビルに入る。
「戦後派作品展」との文字があり、絵の展覧会で、「裸婦像」の前に来て、ナイフで切り裂く。
次は、警察署で、上田吉二郎に説諭されているが、三条は黙秘。
裸婦像の三条を描いたのは、小柴幹治で、三条が抱いている赤ん坊は、彼と間の子である。
そして、刑事の水島道太郎のところに行き、聞かれると三条は、少し話し出す。
ここで、全部分ってしまうが、その通りに進行する。
水島は、大学の友人の近衛敏明がやっているキャバレーを紹介し、三条はそこで働くようになる。
同僚に虐められたりなどがあるが、その度に水島は、三条を助ける。
最後、近衛の店の売上金を盗んで、姉が住み、赤ん坊を預けている富士吉田に行き、苦悶の末に湖に身を投げてしまう。
裁判になり、売上金持ち逃げを裁かれている。そこに、ようやく水島が現れて、三条が彼に送った手紙を読む。
そして、最後は、自分は警察を辞め、三条と結婚することを申し立てる。
護送車で運ばれる三条に向かって、
「いつまでも待っているぞ!」と、
水島が叫んで終わり。
「なんだあ」と思うしかない。
ただ、ここで驚いたのは、キャバレーで歌手が『ブンガワン・ソロ』を歌うこと。
「ブンガワン・ソロ」は、当時はインドネシア民謡と言われていたが、実はグサン・マルハトノサンが作った曲で、晩年には日本に来たこともある。
私は、中村とうようさんの命令で、パシフィコ横浜に会場を取った。
水島道太郎は、戦前から渋い二枚目で、1970年代も東映や日活のヤクザ映画に多数出ていて、良い俳優だった。
衛星劇場