私が、亡き田村光男の紹介で、現代企画室から黒澤明についての本を出すことになった時、
渋谷の喫茶店で、担当の小倉君に会った時、すぐに聞かれたことである。
もちろん、日活のファンだった私は、「知ってますよ」と答えると、
「僕の叔父なんです」と言う。
背は、藤のように高くはないが、顔はよく似ている。
小倉君の母親は、藤のお姉さんなのだ。
藤竜也も、本名は、伊藤で、そこから藤竜也にしたのだそうだ。
小倉君は、非常にまじめに仕事をしてくれて、『黒澤明の十字架』として出すことができた。
今まで出した中で、一番問題を起こした本のようだ。
出た後、ある日、中年の方から現代企画室に電話があり、
「この著者は、黒澤明監督作品をなんで見たのかね、ちゃんとブルーレイで見ているのかね」との質問があり、その後1時間以上もいろいろと苦情を言われたそうだ。
その方は、黒澤明研究会の人で、前にはオーディオの店もやっていたマニアなのだそうだ。
本当にご苦労さんとしか言い様がない。