ルーキー新一と言って知っていのは、60代以上の人だろう。
関西の喜劇ドラマで人気だった芸人の一人で、特に「イヤーンイヤーン」のギャグは有名だった。
澤田がディレックターを務めた『てなもんや三度笠』で、レギュラー並みにゲスト出演していたのだから、人気はあった。
元は、テレビの『漫才教室』出身で、漫才をやっていたが、その面白さから単独の芸人になり、吉本興業からの独立と劇団の結成も、テレビは当初は好意的だったようだ。
だが、劇団の女優の風呂場を民間の会社社長が覗いたことを脅したことから、世間の目は逆転してしまう。
そして、おさだまりの転落劇になる。
作家浅田哲也によれば、
「飲む、打つ、買うの三道楽の内、一番悪いのは打つで、なぜなら買うと飲むには肉体的限界があるが、打つには肉体的限界がないからだ」そうだが、ルーキーは、打つにのめり込んでしまう。
それも、仲間内との賭博が多かったそうだが、それでも借金が増えれば、借金取りに追われるようになってしまう。
そして、自分の劇団や他者の劇団への出演も次第に、地方公演が主になる。地方なら借金取りが来ないからだと言うのはすごい。
たまに、大阪や東京での公演に出ると、その名を知って借金取りが来たというのだから本当に困ったものだ。
そして、朝から酒を飲むようになり、完全にアルコール依存症になってしまう。
最後は、名古屋、そして大阪のバーの二階に住み、夜は店で芸を披露して客から金をもらっていたという。
1980年3月守口市で死ぬ、44歳だった。
関西のお笑いの本質は、本音を言うところで、かなり下品で身も蓋もないところだが、彼はまさにそうだったと思う。
そうしたところ、「建前ではなく、すべて本音だ」とするのは、橋下徹以下の日本維新の会にも通じるものがあると私は思うのだ。