前に、横浜シネマリンで見たとき、以下のように書いた。
話は、源氏店の切られ与三郎で、お富さんが囲われている源氏店に与三郎が、昔のことをネタに強請に来るところが最大の見せ場だが、その前後、さらに後も非常に面白い。まずは、芝居小屋で三味線を弾いている与三郎の市川雷蔵が、出ている役者が下手で嫌だと一座を辞めるところから始まる。戻ってきた長屋で、ばあやの浦辺粂子との会話で、蠟燭屋に子ができなくて養子に入ったが、なった途端に子ができて邪険にされたいきさつ、雷蔵は蠟燭屋が嫌で放蕩をしていることが簡略に語られる。そこに妹のお金(富士真奈美が可愛いい)が来る。お金は、雷蔵を心底慕っていることが分かる。芝居の一座を辞めて、与三郎は上総木更津で、心内流しているが、その三味の上手さに漁師の親分(潮万太郎)の妾のお富(淡路恵子)に目をつけられる。潮は、下品で粗野な男で、深川の芸者だったお富は耐えれれず、潮が旅に出て不在だった隙に、自然と与三郎とできてしまう。それを知った潮は、二人を折檻し、雷蔵の頬に大きな切り傷を付けて、簀巻きにして海に投げ込む。
すると、中村玉緒の旅役者一座が海岸で発見して雷蔵を助け、彼は一座の人間となるが、ある日突然に姿を消す。そして1年後、信州の温泉で雷蔵が新内を流していると、宿にいる玉緒と再会する。
玉緒は、座主だった父親がやくざ者に殺され、一座は解散し、今はやくざ者の女になっている。「もうこんなことは嫌だからと、夜来てくれ、一誌に逃げよう」と真剣に言う。夜、宿に行くと玉緒の傍らで、やくざ者は寝ているので、「酒で寝かしたのか」と聞くと「殺した」と良い、首に紐がまかれている。そこにヤクザの子分が戻ってきて大殺陣になり、玉緒は「この人が殺した!」と雷蔵を裏切り、自分もやくざ者に殺されてしまう。
なんとか江戸にもどった雷蔵は、頬かむりで傷を隠して生きている。そして、浦辺と会い、かつての蠟燭屋は、義母村田知暎子のものになっていて、その兄弟で大阪からきた小沢栄太郎が実権を握り、お金を旗本の嫁にして自分が幕府の御用商人になろうとしていると聞く。なんとしてもお金を救おうとする与三郎は、まず源氏店で、小沢の妾になっているお富に会い、有名な場面を再現する。頬に蝙蝠の刺青のある蝙蝠安の多々良淳とも、お富を強請り、脅し、お金を嫁に行かせなくする計画を打ち明ける。と、お富は、与三郎を裏切り、小沢に伝え、小沢はお金の嫁入りを急かせる。その夜、淡島神社にお参りに来たお金と与三郎は再開するが、言うまでもなく、御用提灯の波が寄せてくる。与三郎は、すべての女に裏切られた不運な男として伊藤大輔は描いている。お金から、兄の与三郎以外に結ばれる男はいないと告白された与三郎は、
「お前だけが、俺を裏切らなあった」と二人で、海に進んでいく。
例によって伊藤大輔先生得意の三角長屋、童唄、踊りのような振付芝居が心行くまで楽しく展開される。
これを見たのは、今度が初めてだったが、戦後の伊藤大輔作品で一番良いのではないかと感じられた。
江戸趣味、しかも化成期の頽廃した感じが非常によく出ていると思えた。
今回、CSで見て、本当に時代劇の面白さをあらためて堪能した。
ここで、雷蔵の与三郎は、二人の女に裏切られる不幸な男として描かれている。
なぜ、このように女が裏切るかと言えば、当時女性は力が弱く、男に依存していくしか生きるすべはなく、またいざという時は裏切るしかなかったのかと思えた。
江戸時代の女性は、本当に大変だったなと思った。
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