横浜市会の民社党の議員では、戸塚区のT議員を落としてはならないだろう。
T氏は、大地主ではないが、土地を相続して市会議員に出ようとした。自民党は多数いたので、民社党から出た。
戸塚には、日立や小糸などの工場もあり、労組票もあったのだろう、見事当選された。
だが、市会にはあまり登庁されず、全国を行脚されていたようだ、賭博のためで、競艇のファンだったようだ。
そのうち、家の周りを街宣車が走っているとの噂が出てきた。
そして、ある日、ボストンバッグを提げて市会に現れ、
「金庫に入れておいてくれ」と言って去った。
受け取った庶務係長は「驚いたね、5000万円というのだから」
すぐにサラ金と暴力団風の男が来て、「バッグを出せ」と脅した。
だが、一見温厚に見える係長だが、戦争中は南島で、機関銃で米軍機を撃ち落としたという人だ、暴力団程度の言うとおりになるわけもなかった。
だが、あまりに街宣車の騒ぎがひどかったのだろう、ついにT議員は辞職することになった。
その記者会見がすごかった。
「俺は、ケチな勝負はしない、100万円以下の勝負はしないのだ」
この時、大久保英太郎市会議長は言った、
「われわれは、毎日当選に向けて人生を賭けをしているのだから、賭け事なんてする奴の気が知れない」
確かに、議員は4年ごとの任期があり、そのたびに選挙という試練を受けるのだから大変である。
市職員には、T議員から酒食のもてなしを受けた人もいて、市役所での評判はそう悪くなかったのだが。
私ももちろん知っているが、バカなとは思うが、そう悪い感じはなかった。
ただ、下品な田舎者という感じだった。