雨で外に出られないので、長いのを見る。
第1部は予約しそこなったので、2部から。
新興財閥の伍代家の庭で、少年が剣道の稽古をしている。伍代家の次男北大路欣也と友人で左翼の山本圭。
富豪の当主が武道を愛好していたのは結構あり、西武の堤康次郎も柔道が大好きで、「毎朝稽古させられていて苦痛だった」と、横浜インターコンチの堤猶二さんが言っていた。
北大路は、人妻の佐久間良子と恋仲で、その家に行く煉瓦塀の路地は、石原裕次郎・浅丘ルリ子の『赤いハンカチ』にも出てきたところで、多分本郷にあったものだと思う。
浅丘は、陸軍将校の高橋英樹と恋仲だが、長い春で結ばれないが、吉永小百合は山本圭と恋仲で、最後は結ばれる。
そして、山本が出征した後、吉永は本所でセツルメント活動に入る。何とかセツルというのは、私が早稲田に入った時にはまだあり、民青の連中だったと思う。
また、医師の加藤剛は、満州の富豪の娘の栗原小巻と出来ると言う風になっている。
北大路と佐久間は東映、浅丘と高橋は日活、加藤と栗原は俳優座と、それぞれの集団の組み合わせになっているのは上手い構成だ。
筋は、昭和初期の張作霖爆殺から満州事変、支那事変、さらにノモンハン事件に行く歴史のお復習いだが、役者が良いので面白く見られる。
滝澤修、芦田伸介、高橋英樹、高橋悦史、浅丘、吉永、佐久間、さらに和泉雅子も出ている。
北大路と佐久間が、大連港で再会する時、日本から満州移民で来た連中のリーダーは、河上信夫さんである。
3部になると軍人がやたらに出てくるが、山本燐一の辻政信が最高である。
最後は、ノモンハン事件で、ソ連軍に関東軍は大敗する。
ソ連の協力の戦車のシーンは迫力があってすごい。
この2本には、私の知合いが出ている。
一人は、2部で逮捕された山本圭と拘置所で同房となる男の斎藤真さん。当時は、劇団俳優小劇場の若手だったが、今は劇団俳小の代表である。
もう一人は、満州の軍隊で、戦地に北大路の部隊が出ていく行進の時、その隣を歩いている吉田真さんである。
彼には、1970年代に劇団の旗揚げ公演を六本木の自由劇場でやったときに出てもらった。
彼は、関西大学の劇団で、そこはかなり優秀だったらしくアメリカに行ったこともあるとのことだった。
その後、劇団青俳の研究生になり、その関係で参加してくれたと思う。
その行進場面の前夜、吉田さんは、山本監督、北大路らと一緒に酒を飲み、次の日に、北大路の隣に付けられたとのことだ。
3部の1973年は、もう日活はポルノに移行していて、井上博一、白川和子、片桐夕子、二条明美らポルノ連、さらにポルノには出ていないが元日活の夏純子も出ている。
監督の山本薩夫は、当時はすべてコンテ主義で、その日に撮るシーンをあらかじめコンテにしてスタッフに示して効率的に撮影したそうだ。
その性か、彼は1960年代以降は『忍びの者』、『白の巨塔』を大映で、『金環食』などを東宝で撮る。
彼と黒澤明は同い年で、戦中は一緒に東宝にいたが、戦後のストライキで東宝を辞め主に独立プロで映画を作って来た。
1960年代中頃から黒沢が5年に1本しか映画を作れなくなったのに対し、各社から注文が殺到する大監督になった。
世の中は不思議なものである。
チャンネルNECO