1974年の松竹・文学座映画
私は、中村雅俊という役者が嫌いだ。理由は簡単、下手だからだ。結構長く役者をやっているが、これほど上手くならない役者も珍しい。ほぼ同年代に村野武憲がいるが、結構様になってきている。
この映画は、原案が山田洋次になっていて、おそらくは渥美清の『男はつらいよ』の二番手を狙ったのだと思う。
中村は、大学生で下高井戸の下宿に住んでいて、そこの商店街に連中で、佐野浅夫、三遊亭小さん、竹下景子、ミヤコ蝶々などが出てくる。
また、赤塚真人とのつまらない挿話もあるが、彼が田舎に帰るシーンでは、上野駅で中村は、万歳を叫ぶ。まるで黒木和雄の傑作『祭の準備』のように。
そして、近所の一人暮らし老人の笠智衆と中村は知合いになり、奇態な言動に驚かされる。
この辺では、主役は笠智衆になってしまい、やはり芸の差を感じさせる。
「俺たちの時」ではなく、お爺さんのときである。
そして、最後、檀ふみは、大阪に嫁に行ってしまい、寅次郎のように中村は失恋する。
だが、次は作られなかったのは当然である。
監督の水川淳三は、この後はテレビに行ったようだ。