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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『野火』

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1969年の大映作品で、原作は大岡昇平、脚本は和田夏十、監督市川崑である。

塚本監督が作ったのも悪くはなかったが、廃兵たちがフィリピンの原野を彷徨うところを多数の役者でやるのは、やはり迫力がある。

島の結集地に行くために蟻の行列のようにぞろぞろと行く道を、米軍の壮大な車両と兵隊が次々と横断してゆく。

それは、近代と原始が戦っているようにさえ見えてくる。

また、日本人兵士が対立しているフィリピンの住民の原始性と、日本人廃兵の原始性はよく合っているように見える。

負傷して野戦病院に行ったが、入院を断られて戻ってきた主人公(船越英二)は、なんとしても入院させてもらえと病院、と言ってもただの藁小屋だが、戻ってくる。

そこが米軍に襲われて全員死ぬので、またジャングルを彷徨し、ミッキィー・カーチス、滝澤修のコンビに合い、一緒に彷徨することになる。

滝澤は、タバコの葉を持っていて、兵隊に売りつけて食糧(イモ)に変えている。

滝澤は言う「兵隊はタバコが死ぬほど好きなんだ」

ヘビースモーカーの市川崑が言わせるのは皮肉だが。

滝澤もそうだが、もう一人、廃兵集団に稲葉義男がいて、彼が部下の兵を搾取し使役しているのは、普通の社会の構造のようで面白い。軍隊は、社会の縮図であるのだから。

最後、飛行機が迎えに来ると精神を病んでしまった兵士の浜村淳がすごい。なにしろ、糞を食べているのだから、空腹ゆえに。

 

                 

大岡昇平の原作は、この主人公を狂人にしているのは、サルの肉が実は人肉喰いであるためだ。

衛星劇場


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