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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『斬られの仙太』

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新国立劇場は、1934年に書かれた三好十郎の『斬られの仙太』その後、1968年に民芸で、1988年に文化座で上演されているが、戦後最初に上演したのは、早稲田大学劇団演劇研究会で、実はこのときは、「こんな反動的な作品を上演するのは怪しからん」との声があったとは、先日紹介した林さんの話。これをやったのは、当時は非常に珍しかったのだが、大谷静男さんという大学生の作・演出で創作劇を二本やった後で、自分たちの気持ちに合う劇としては、三好十郎しかなかったからだそうだ。
       
話しは、幕末の常陸真壁の百姓の仙太郎が、偶然に水戸藩の尊皇攘夷運動に巻き込まれ、最後は天狗党に参加することになる。各地を転戦し、最後は越前の山中で仲間割れで、同士討ちになり、崖から落ちる重傷を負う。20年後、真壁の村にも、自由民権運動の連中が来て、運動への参加を呼びかけ、「この辺に仙太郎という人はいないか」と聞く。だが、誰も答えず、黙々と村人は田んぼで草取りを続ける。そして、連中が逃げるときに田んぼをずかずかと入ったとき、「田んぼに入るのは許せない」と言う、仙太郎だった。彼は言う、「維新で偉くなった連中は元は軽輩だった。それに乗れなかった連中が騒いでいるのが自由民権運動で、俺たちには関係ない」と。
今回でも4時間を越えているが、半分は切っているので、二幕目までは盛り上げりに欠けた。しかし、崖から仙太郎が転落し、舞台が転換して田んぼが現れるところは、さすがに感動した。ただ、黄金色の稲穂は違うと思う。草取りをするのだがら、まだ穂が出たくらいの青々としたときである。演出は上村聡史。このラストシーンで思ったのは、黒澤明の『七人の侍』のラストの田植えのシーンは、ここからヒントを得たものだろうとのことだ。黒澤は、三好十郎が脚本を書いたPCL映画の『戦国群盗伝』のセカンド助監督で、この時、御殿場で見た馬の姿に感動したと書いている。また、この監督の滝澤英輔は、戦後1949年に映画『斬られの仙太』を作っているのだから。この製作は、『ゴジラ』の田中友幸だった。
新国立劇場




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