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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『顔』

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1957年1月の松竹映画で、世の松本清張原作の最初の作品である。監督は、京都の大曽根保康で、この人は、時代劇が多いが、こうしたサスペンスも上手い。
                           東海道線の駅で止まっている普通列車に、特急から酔った男が、乗り換えてくる。山内明で、人を探しているが、それは岡田茉莉子。列車には、大木実も乗っている。山内は、岡田を見つけると、洗面所に連れて行き、「俺からは逃げられないぞ」と脅す。そこに大木が現れて、「洗面所はお前だけのものじゃないぞ」と言う。岡田と山内は、争いの中で、山内は扉の外に出てしまい、指だけで捉まっているが、岡田は扉を閉めてしまい、山内の姿は消える。大木はそれを見ていて、岡田が落としたコンパクトを拾っていたことは後で分る。
救急車が病院に運ばれて来て、地元の刑事の笠智衆は、山内が指名手配犯であることに気づき、警視庁に電話させる。無免許医者で、違法な堕胎手術をしていたと言うのだ。そこは、草津で、笠刑事は、上京して警視庁に協力するが、諸処で「田舎の男」とバカにされる。この頃の地方と東京の差は今よりもはるかに大きく、ここの悪役たちは、東京の華やかさ、明るさに憧れて上京して悪事をなすというテーマである。
お好み焼き屋で、岡田と千石規子が食事していて、二人は善人ではなく、ずっと悪事を企んで来たことが明かされる。今度は、デパートでのファッション・ショーになり、岡田茉莉子は、スター然としていて、業界人の小沢栄太郎からは手を出されるが、それも計算の内。彼女は、クラブのリーダーの宮城千賀子から、小沢も人気も奪ってしまう。ファッション・ショーは、今のようにランウエイを走り去ると言うものではなく、階段を優雅に降りてくると言った具合。大木は、九州の炭坑で労組のリーダーだったが、争議で首切られた男で、世間に恨みをいだいていて、警察がファッションクラブで、犯人の面通しをさせるが、「ここにはいない」と言い岡田を庇ってあげる。この捜査は、今では明らかな違法捜査。岡田は、プロ野球選手の森美樹ともできていて、球場での練習風景もあり、どこかと思うと、小美屋の看板が見えたので、今はなき川崎球場である。この頃は、照明はあったが、外野のスタンドは低い。
このように、いろいろと当時の新風俗が出てくるのも、さすがに松竹である。吉村公三郎は、「映画は風俗を描かないといけない」と島津保次郎から言われたとのこと。この作品は、松竹京都だが、ほとんど東京付近で撮影されている。岡田は、大木に脅されてほとんど罪状を暴かれそうになるが、大木はトラックに跳ねられて死んでしまい、森は選手を辞めて田舎に帰る。最後、ショーの会場に岡田茉莉子がもどってきて、そこに笠智衆ら刑事が来たところでエンド。音楽は、黛敏郎で、サスペンス映画らしい雰囲気を作っていた。






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