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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『ロケーション』

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1984年の松竹映画、原作は晩声社の『ザ・ロケーション』で、このドキュメンタリー本は、映画の原作になっていて、日活の『キャバレー日記』もそうだったと思う。これは、本とは少し違っていると思われ、脚本の近藤昭二の想いが強くなっているようだ。
        物語は、今や絶滅危惧種といわれるピンク映画の人たちのこと。カメラマンの西田敏行が主人公で、同棲している大楠道代は女優だが、もう辞めようと思っている。ライターが柄本明で、この西田、大楠、柄本は高校時代からの仲間だった。また、チーフ助監督は竹中直人である。もともと、主役に予定されていた大楠が下り、ロケ現場の闇ホテルの下女だった美保純が、急遽代役に当てられて、なんとか撮影は進み出すが、その途端に監督の加藤武が心臓病で発作を起こし、これも竹中がすることになる。さらに、主役の美保が、お盆に故郷に墓参りに行ってしまい、スタッフは後を追って福島に行く。そこでもいろいろあるが、なんとか撮影は終了し、試写室で加藤も来て、試写が行われ、加藤から西田は、撮影の腕を絶賛される。だが、配給会社の矢崎滋は、「こんなめちゃくちゃな作品はない!」と怒る。
昨年亡くなった森崎東監督としては、普通のできだが、「このピンク映画の撮影悲喜劇は、大手の松竹だって大して変わりはないぜ」と言っているように見える。20代を「演劇青年」として過ごした私としては、身につまされる感じもあるが、70になるとさして感傷はない。近代映画協会と青年座の協力なので、ホテルの婆さんが乙羽信子、福島の映画館の館主が殿山泰司、大楠が自殺未遂で担ぎ込まれる病院の医者が森塚敏,照明が大木庄司、福島の駄菓子屋の女が初井言栄とそれぞれの重鎮が脇で出ているのが非常に良い。よく考えれば、西田敏行は、元は劇団青年座なのだ。これは、市原悦子が元俳優座であったことに同じように、今ではあまり知られていないことかもしれない。衛星劇場


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