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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『侠花列伝・襲名賭博』

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松原智恵子にこんなヤクザ映画があるとは知らなかった。1969年だが、日活も本当に混乱していたわけだ。
           どこだが分らないが、温泉場で、松原智恵子が露天風呂に入っているところに、腕を斬られて血を流している藤竜也が乱入してきて、松原は藤を助ける。彼女は、地元の老舗ヤクザの二代目江原真二郎の許嫁で、その組は温泉場の権利を持っている。その権利を見明凡太郎と深江章喜の悪い組が狙っている。江原の子分は植村謙二郎と渋い配役。植村は、黒澤明の『静かなる決闘』で梅毒患者を演じたベテランで、この頃は日活に移籍していた。藤と松原は、半年後の3月15日に浅草で会おうと約束して別れる。そこに女壺振りの梶芽衣子が現れ、藤を追う。このシーンはSLなので、大井川鐵道だろうか。
浅草で、松原は、佐野浅夫と奈良岡朋子の小料理屋に勤めているが、そこの娘と一緒になり、子供も作ってヤクザになっていたのは、新内語り崩れの高橋英樹。3月15日の朝、浅草寺で松原は待つが、藤は遠くから見ているだけ。そして、夕方に梶と一緒に現れて「これが女房だ・・・」と言って去る。もちろん、嘘である。江原は、見明らに殺されかかり、死の床で、松原は花嫁衣装を着て、江原と結婚し、驚くことに三代目になる。まるで『絶唱』の舟木一夫と和泉雅子だ。なんとも驚く展開だが、脚本は元大映の星川清治で、実に大映的。
最後は、植村も殺されて堪忍袋の緒が切れて、藤竜也は見明凡太郎の組に殴り込みに行き、壮絶な殺試合で高橋英樹の腕の中で死ぬ。
これは、戦後の日活の歴史の否定である。日活は、戦後製作再開で、当初は文芸映画と時代劇だったが、どちらも駄目で、『太陽族』映画で、一躍ヒットして、戦後の日本映画をリードする。これは、まさに時代が、戦前と縁を切り、欧米的な新しい社会と時代になったことの反映だったが、これでは逆戻りだった。その後、ロマンポルノという、戦後の女性の力が増大したことを強く反映した路線になったのも、当然のことだった。日本映画専門チャンネル

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