Quantcast
Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

『さすらいのカーボーイ』

$
0
0
『イージーライダー』は見ていたが、これは見ていなかったが、傑作だった。小津安二郎作品のような映画詩である。撮影のヴィルモス・ジグモンドが実に美しい。
           アメリカ中西部だろう、ピーター・フォンダとウォーレン・オーツ、さらに若者が彷徨している。二人は、7年も一緒で旅している。若者はカルフォルニアに憧れていて、ゴールドコーストだと思っている。3人は、西へ行き、かのデスバレーの見える村に着く。そこは変な感じだったが、夜二人が酒場で酒を飲んでいると銃声が聞こえ、若者が扉から倒れ込んで来るが、首を撃たれている。怪しげな男と女が入って来て、「妻に暴行しようとしたので、撃った」という。「妻に聞こう」と言うと、「英語ができない」と答える。この辺は、当時はメキシコで、後にアメリカに入れられた州なのだ。カルフォルニアの金の話が出てくるので、19世紀の終わりくらいだろう。この作品は、今見ると非常に皮肉である。60年代の「夢のカルフォルニア」が、もう幻想であり、暗い現実であることを暗示しているのだから。ピーターは家に戻る決意をし、ウォーレンも着いて行く。1週間くらいで着くというので、これも中西部なのだろう。
6年ぶりに戻ると、妻(ベルナ・ブルーム)と6歳くらいの娘がいるが、二人は家ではなく、納屋で寝ることになる。「どの面下げて戻ってきた」と妻が思うのは当然で、この映画は、女性の立場から見た夫婦関係が描かれていて、フミニズム映画だとも言える。
町に日用品を買いに行くと、妻が使用人を雇って来たが、中には男と関係しているとの噂がたっている。ピーターは、町に行き、「使用人不要」との貼紙をを出し、妻に聞く。「時には、淋しくて使用人と同衾したこともある」と告白し、ピーターも否定しない。この辺の描き方は、非常に新しいと思う。何を作っているのかはよくわからないが、たぶん小麦だろう。
ピーターと妻は関係をもどし、ウォーレンはそれを分って、「西に行く」と一人で出ていく。しばらくすると、彼の馬に乗った男が来て、切り落とした彼の小指を見せる。ピーターは、妻が止めるのも聞かず、男の言う町に行く。この辺は、日本のヤクザ映画の「殴り込み」のようでもあり、妻との生活より男同士の友情である。ウォーレン・オーツが閉じ込められているのは、あの若者が殺された町で、ピーターはあの連中と銃撃戦になり、ウォーレン・オーツの腕の中で彼は死ぬ。ウォーレン・オーツは一人でピーターの家に戻ってきて、また納屋で寝ることになる。NHKBS



Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

Trending Articles